勉強が苦手な中学生には、例え話を使って教えたら、わかりやすいかもしれない。
そう考えて、私はこう説明したことがあります。
「誰々は、~する・~だ」の中の「誰々は」が主語だよ。主語は、文の主人公なんだ。
ところが——。私: 主語って何だった?
中学生: 主人公!
私: じゃあ、この文の主語はどれ?
中学生: ……?
その中学生は「主人公」という言葉は覚えていましたが、主語を見つけられませんでした。
「しまった!」と思いました。「文法より、例え話のほうが印象に残ったのかもしれない。」
この出来事をきっかけに、私は例え話の使い方を見直すようになりました。
例え話はわかりやすさにつながることもあります。でも使い方に気をつけないと、本来伝えたい内容よりも例えのほうが印象に残るのかもしれません。
では、なぜそんなことが起こるのでしょう? 例え話はどう使えば効果的なのでしょう?
この記事では、私が無料塾で英語を教えた経験をもとに、「もしかすると、こういうことなのかもしれない」と考えたことを書いています。現場で感じたことをベースにした個人的な考察です。
中学生の勉強を見ている方にとって、例え話について考えるきっかけになれば嬉しいです。
例え話だけ覚えてしまうことがある
先ほどの中学生のように、「主語は文の主人公」と聞くと、
- 「主人公」という例えだけを覚える
- 主語を見つけることはできない
というケースがあります。
同じようなことは、ほかの文法でも起こり得ます。たとえば、こんな例え話を使ったとします。
■例え話①
一般動詞を疑問文にするには、文頭にdoを置こう。一般動詞の場合、doという助っ人が必要なんだ。
〈例え話だけを覚えてしまうと?〉
「一般動詞には助っ人」は覚えている。でも、doを文頭に置くことは覚えていない。
■例え話②
動詞の前にcanを置くと、「~できる」という意味になるよ。canは「できる」をプラスするパワーアップアイテムなんだ。
〈例え話だけを覚えてしまうと?〉
「canはパワーアップアイテム」は覚えている。でも、動詞の前にcanを置くことは覚えていない。
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上の例はあくまでイメージですが、こうしたことは十分あり得ると思います。
では、例え話は使わないほうがいいのでしょうか? そうではありません。
例え話自体が悪いのではなく、それだけを覚えてしまうことが問題なのです。
なぜ、例え話だけを覚えてしまうの?
例え話を理解するには、いくつかのプロセスが必要です。
子どもは、まず「この例え話は何を伝えたいのかな」と考え、文法に結び付けようとします。
「この例えは、文法の説明と、どうつながっているんだろう?」と読み解く必要があるのです。
たとえば「主語は主人公」という説明なら、「主語は中心的な存在、ってことかな」といった具合です。
ところが、この「読み解き」の途中でつまずくことがあります。
■つまずき①
「主人公って、カッコいいってこと?」のように、例え話の意図をうまくつかめない。
■つまずき②
例え話の意図はなんとなく理解できていても、それを文法に結び付けるところで止まってしまう。
(例) 「主人公 = 中心的な存在」までは理解できる。でも、「主語 = 文の中心的な存在」という形に整理するところまでは進まない。
いずれの場合も、例え話が文法にうまく結び付かないまま終わってしまいます。
その結果、例え話だけが印象に残ってしまうのでしょう。文法よりも具体的でイメージしやすく、インパクトがあるためです。
●「文法を理解できない」とは限らない
例え話だけを覚えている子を見ると、「文法があまり得意ではないのかも」と感じるかもしれません。
でも、そうとは限りません。
文法を理解する力はあるのに、例え話を文法に結び付ける途中で止まってしまった、というケースも考えられるのです。
例え話はタイミングが大事
例え話は、うまく使えば理解の助けになります。ただし、「どの段階で使うか」によって効果は変わってきます。
●その単元をほとんど理解していない段階
その単元の「土台」ができていない段階では、例え話を出すと、子どもの負担が大きくなりがちです。「文法の理解」と「例え話を文法につなげる作業」を、同時に進める必要があるためです。
この段階では、例え話によって情報量が増えすぎてしまい、整理が追いつかなくなる可能性があります。
●その単元を十分に理解している段階
すでに理解している場合、例え話を聞いても、理解が大きく変わることはあまりありません。
例え話というプラスアルファがなくても、学習自体に大きな支障はない段階です。
●「なんとなくわかる」「あと一歩!」という段階
例え話が力を発揮しやすいのは、この段階だと私は考えています。
その単元を理解しつつあるものの、まだ整理しきれていない段階です。
すでにある程度の「土台」ができているため、例え話を文法に結び付ける余裕があります。そして、例え話という別の視点が加わることで、それまでバラバラだった知識がつながり、「そういうことか!」と理解が深まりやすくなります。
例え話が「学習内容を整理するための補助線」のように働くイメージです。
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このように、例え話は「単元の最初に使うもの」というより、「なんとなくわかる」「あと一歩!」の段階で、理解を整理するための補助として使うと、そのよさを生かしやすくなるでしょう。
まずは文法そのものをシンプルに伝える。そして子どもの反応を見ながら、必要に応じて例え話を添える。そんな進め方が、勉強が苦手な子には合うことも多いように思います。
まとめ
例え話は、説明をわかりやすくする手段として便利ですが、「どの段階で使うか」によって、その効果は変わってきます。
たとえば、単元の内容をまだほとんど理解していない段階では、例え話はかえって負担になりがちです。
一方で、「なんとなくわかった」「あと一歩!」という段階では、知識を整理するための「補助線」として機能します。
大切なのは、「今、どの段階にいるか」という視点で使いどころを見極めることです。
例え話は無理に使う必要はありませんし、使わないほうがうまくいくこともあるでしょう。ただ、タイミングよく使えば、子どもの理解を助けるきっかけになると思います。
