「This」で始まる文を次のように書いてしまう中学生はいませんか?
このペンは新しいです。
× This is pen is new.
これは私のカバンです。
× This my bag.
「なんで、こんなシンプルな文でミスするの?」と、教えながら悩んでしまうこともありますよね。でも、子どもたちがつまずく背景には、見落としがちな理由があるのです。
この記事では、「『This』の文でつまずく原因」を解説し、パズル感覚で取り組める英作文の教え方をご紹介します。勉強が苦手な子をサポートしたい方におすすめの内容です。
なぜ「This」の文でつまずくの?
日本語の「無意識」な使い分け
「This」には「この」と「これ」という2つの使い方があります。
このペン、借りていい?(後ろの言葉とセット)
これ、借りていい?(1語で独立)
子どもたちは普段、日本語で「この」「これ」を無意識に使い分けていますよね。
国語の授業でこの2つの違いを教わると、「あ、確かに使い方が違う!」と気づく子もいますが、みんなが気づけるとは限りません。
「どっちもペンの話でしょ」と、文の「内容」に注目するあまり、言葉の使い方にまで意識が向かない子もいるのです。
日本語の段階で違いを意識していなければ、英語の「This pen」(このペン)と「This」(これ)を使い分けられなくても不思議はありません。
「This is」の丸暗記
英語を習いたての子どもたちは、「This is」を1つの決まり文句(音のカタマリ)として丸ごと覚えます。
すると、のちに「This pen is ~」のような形の文が登場したとき、大きな壁にぶつかってしまいます。
「『This is』はカタマリのはずなのに、引き裂かれて間に何か入ってきた!」と、違和感を覚えるのです。
そして、その違和感を解消したくて、慣れ親しんだ「This is」の形をキープしようとします。
その結果、「このペン」を「This pen」ではなく「This is pen」と書いてしまうのです。そこに「is new」が続くため、次のような文が生まれてしまいます。
このペンは新しいです。
× This is pen is new.
「This」でエネルギー切れ
これは私のカバンです。
× This my bag.
英語に慣れていないうちは、「This」を正しく書くだけでも大仕事です。
「最初は大文字だからTで……次はhだった。i、s、書けた!」
「This」の4文字に全力を注ぐうちに、「is」が記憶からこぼれ落ちます。「This」を書いた時点でエネルギー切れになり、頭の中がいったんリセットされるのです。
その状態で残りの日本語(「私のカバン」)が目に入ると、意識は一気にそちらへ持っていかれます。その結果、「This my bag.」という形になってしまうのです。
文法用語ゼロ!「This」の文の教え方
【準備編】日本語で「この」「これ」を区別
「This」の文に入る前に、まずは日本語で「この」「これ」を区別する練習をしておきます。日本語でパッと区別できれば、英語の理解がよりスムーズになりますよ。
〈教え方の例〉
「この」と「これ」は、よく似ているけれど、大きな違いがあるよ。
この ペン、借りていい?→「この」は、後ろの言葉と必ずセット(2つの四角がセット)
これ、借りていい?→「これ」は1つだけでOK(四角が1つ)
「『この』の後ろには必ず名詞がくる」「『これ』は単独で主語や目的語になれる」といった文法用語を使わないのがポイントです。
勉強が苦手な子は、文法用語を聞くと「難しそう……」と身構えてしまいがちだからです。
そこで、「四角が1つか、セットか」という「見た目」を頼りに、「この」と「これ」を区別します。
日本語の段階でこの「見た目」を意識しておけば、英作文にチャレンジするとき大きな助けになりますよ。
まずは「四角の数」を意識する練習から始めてみてください。
「この」「これ」を四角で囲みましょう。
「この」の場合は、セットになる言葉も四角で囲みましょう。
1. このマンガ
2. これ
3. この選手
【解答】
1. この マンガ 2. これ 3. この 選手【実践編】「バリア作戦」で英作文
いよいよ英作文です。パズル感覚でできる方法をご紹介します。名付けて「バリア作戦」です。
Step 1 バリアを張る

日本語の「は」の直前に縦線を引き、それ以降の文字をプリントや消しゴムなどで隠して「バリア」を張ります。
●なぜ、わざわざバリアを張るの?
文全体が視界に入ると、「うわっ、難しそう」と圧倒されてしまいがちです。また、すべての単語を一気に処理しようとして、頭の中がパンクすることも……。
そこで、まずは主語である「この〇〇」「これ」に100%集中できるよう、後半の情報を物理的にシャットアウトするのです。
視界に入る文字が減るだけで、子どもはラクな気持ちで取り組めますよ。
教えるときは、子どものタイプに合わせて、声かけを工夫してみてください。
にぎやかなことが好きな子なら、「さあ、バリア展開!」とゲーム風に。クールなタイプの子なら、「バリアを張って、前半を片付けちゃおう」と伝えるだけでもいいですね。
Step 2 前半を英語に置き換える

バリアの手前(前半部分)を、上述の準備編で出てきた「四角の数(見た目)」に合わせて、英語に置き換えます。
この 〇〇 → This 〇〇(2つの四角がセット) これ → This(四角が1つ)●なぜ「意味」ではなく「見た目」から入るの?
英語を習いたての子は、「単語1つにつき、意味は1つだけ」と、カチッと固定しがちです。
そのため「『this』には2つの意味(この・これ)があり……」と理屈から入ると混乱する場合があります。
そもそも、前述のとおり、日本語の段階で「この」と「これ」の違いを意識していない子も少なくありません。
そこで、「意味」は横に置いておき、「見た目(四角の数)」に合わせて、パズルをはめるように英語を割り当てていきましょう。
ある程度書けるようになってから理屈を学んだほうが、スムーズに理解できる場合も多いものです。
子どもの手が止まったら、「四角は1つ? セット?」とヒントを出してあげてくださいね。
Step 3 バリア解除! すぐ「is」を書く

後半を覆っていたプリントなどをどかし、残りの日本語を読む前に、すぐ「is」をポンと置きます。
●なぜ、「すぐにis」なのか?
バリア解除後、残りの日本語(「私のカバン」など)が目に入った瞬間、子どもの意識は一気にそちらへ持っていかれます。
だからこそ、「残りを見る前に、isを書いてしまう」のです。「解除→is」を一連の動作にして、リズムよく体で覚えていく、というわけです。
●be動詞の細かい説明は、あえて封印!
「動作がないときはbe動詞を使う」「主語がI・you以外で単数だから……」といったbe動詞の説明は、あえて封印します。
子どもの意識が本筋(「This」の使い方)からそれてしまうのを防ぐためです。
「This」の単元では、「バリア解除、即is」という理屈抜きの「約束事」として教えたほうが、子どもも学びやすくなりますよ。
Step 4「は」の後ろを英語にする

最後に、「は」の後ろを英語に直せば英文の完成です。
●「は」について、どう説明する?
子どもから、「『は』は英語に直さなくていいの?」と質問されることがあるかもしれません。
そんなときも、細かい理屈には深入りせず、シンプルにこう伝えてみてください。
「『は』はバリアの位置を教えてくれた目印(ツール)だから、英語にしなくて大丈夫だよ」
「大切な目印だったんだ」という納得しやすい理由がわかれば、子どものモヤモヤも解消され、後半の英訳に集中できますよ。
指導の盲点:NGな例文の組み合わせ
【NG】
(a)
この ペン は新しいです。 This pen is new.(b)
これ は新しいペンです。 This is a new pen.「This」の文に慣れるまでは、意味が似ている(a)と(b)のような文を並べて提示するのは、避けたほうが無難です。
意味が似ていると、子どもは「どっちも新しいペンの話だ」と、「内容」に注目しがちです。肝心の「見た目(四角の数)」の違いに意識が向かなくなってしまいます。
問題集には、上のような例文のペアがよく登場します。ですが、勉強が苦手な子に教える場合、次のように例文の組み合わせを工夫するのがおすすめです。
【おすすめ】
(c)
このペンは新しいです。
This pen is new.
(d)
これは私のカバンです。
This is my bag.
最初のうちは「ペン」と「カバン」のように、文の内容をガラリと変えます。これなら「話が同じであること」に気を取られることもなく、見た目(四角の数)に集中できますよ。
後半のミスは「あえて見逃す」
今回のゴールは、あくまで「This」と「This 〇〇」の使い分けです。もし文の後半でミスがあっても、最初のうちは深追いしません。
(例)これは新しいペンです。
× This is new pen.(aがない)
× This is a neu pen.(newのスペルミス)
間違いを細かく指摘し始めると、子どもの意識が本筋(「This」の使い方)からそれてしまいます。
そればかりか、「せっかく前半が書けたのに、またバツになった……」と、やる気を失いかねません。
最初のうちは、「aを入れるとバッチリ!」「スペルはこうだよ」とサラッと伝えるのがコツです。
すべてのミスについて解説するよりも、まずは今回の目標である「This」や「This 〇〇」が書けたことを、一緒に喜んでみてくださいね。
あらかじめ練習問題の隅に、「※新しいペン a new pen」といったヒントを添えておくのもおすすめです。
【おまけ】英文和訳もバリア作戦でOK!
この「バリア作戦」は、英文を日本語に直すときにも使えます。
Step 1 isの前に縦線を引き、それ以降を隠す(バリア展開!)。
Step 2 This 〇〇 なら この 〇〇、This なら これ に置き換える。Step 3 バリアを解除して「は」を書く。
Step 4 残りの英語を日本語に訳す。
ここでも「『This』の意味って何だっけ?」と考える必要はありません。あくまで「見た目」(四角の数)を頼りに処理するのがコツです。
まとめ
「This」で始まる文を教えるときのポイントは、次の2つです。
- 英語に入る前に、日本語で「この」「これ」を区別できるようにしておく。
- 「意味(理屈)」ではなく、「見た目(四角の数)」から入り、パズル感覚で文を組み立てていく。
よかれと思って教えた細かな文法が、勉強が苦手な子にとっては負担になってしまうこともあります。
時には理屈を後回しにするほうが、子どもも学びやすくなるものです。
まずは、「文が完成した!」という喜びを子どもたちと一緒に味わってみてくださいね。
