不定詞の単元では、〈It is … to ~〉や、〈It is … for だれだれ to ~〉という文が出てきます。
この2つを、勉強が苦手な中学生にどう教えるか? どうすれば子どもが理解しやすくなるのか? 今回は、その方法をご紹介します。
〈It is … to ~〉を教えるときのコツ
〈It is … to ~〉や、〈It is … for だれだれ to ~〉という文を作るには、知っておくべきことがどっさりあります。
その「どっさり」を小分けにして少しずつ教える。これがコツです。
あれもこれも一度に説明すると、勉強が苦手な子は、その情報量に圧倒されてしまいます。
そうなると情報をうまく整理できず、〈It is … to ~〉という文の仕組みを把握しづらくなってしまいます。
ですので、少しずつ新しい情報に慣れさせていくのが大事です。
不定詞〈It is … to ~〉の教え方
その具体的なやり方として、私は4つのステップに分けて教えています。
ステップ1 「…だ」を表す単語に慣れさせる
まず、「どんな文を作るのか」を子どもに説明します。
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「~することは、…だ」という文を作ろう。たとえば、「泳ぐことは簡単だ」とか、「本を読むことは重要だ」とかだね。
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そして、「~することは、…だ」の中の、「…だ」にフォーカスします。
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「…だ」にどんな単語が入るか見ていこう。たとえば、「簡単だ」とか「重要だ」とか、そういう単語が入るよ。
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「…だ」に入る単語の定番といえば、こちらです。
easy, fun, nice, difficult, important, interesting, necessary
〈It is … to ~〉の文では、文字数の多い単語が、これでもかというほど出てきます。
そして、このような単語を覚えていない子にとって、〈It is … to ~〉という文は、かなり難しく感じられるでしょう。
ですので、まずはウォーミングアップ。「…だ」に入る単語を紹介し、それらに慣れさせておきます。
とはいうものの、長い単語のつづりなんて、チャチャッと覚えられるものではありませんよね。
ですので、ひとまず単語の「意味」と「読み方」を覚えさせます。この2つを覚えておくだけでも、あとがラク! 並べ替え問題などに取り組みやすくなりますよ。
ステップ2 不定詞のカタマリに慣れさせる
次に、不定詞のカタマリに慣れさせます。
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「~すること」は、不定詞を使って表現できるよ。不定詞というのは、〈to + 動詞の原形〉というカタマリのこと。「泳ぐこと」なら、〈to swim〉だね。
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こう説明したあと、下のような不定詞のカタマリをいくつか作らせます。
話すこと ( to ) ( speak )
使うこと ( ) ( )
学ぶこと ( ) ( )
このとき、教科書(名詞的用法の単元)に出てくる動詞も教えるのがオススメです。そういう動詞に接する機会が増えれば、学校の授業についていきやすくなりますから。
不定詞のカタマリを作らせるときの注意点
子どもたちの中には、たとえば「本を読むこと」を〈to books read〉と書いてしまう子がいます。動詞(read)の前に目的語(books)を置いてしまうんですね。
ですので、次のように説明する必要があります。
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to のすぐ後ろに動詞を置こう。「本を読むこと」は、〈to read books〉。〈to books read〉ではないよ。〈to + 動詞の原形〉というカタマリは、バラバラに分解しちゃダメ。
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もちろん、下のような説明でも大丈夫です。
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日本語では、「…を~する」と言うよね。でも英語の場合は、「~する。…を」という順番で単語を並べるよ。
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どちらの説明もアリです。ただ、〈to + 動詞の原形〉という不定詞のカタマリを子どもに意識させたいなら、「バラバラに分解しちゃダメ」という説明のほうがいいかもしれませんね。
ステップ3 〈It is … to ~〉という文を作らせる
いよいよ、文の作り方を子どもに説明します。たとえば、こんな感じです。
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「泳ぐことは簡単だ」は、〈It is easy to swim.〉というよ。
英語の場合、まず「簡単だ」と言う。これは、〈It is easy〉と表現するよ。
このように、まず「簡単だ」と言ったあと、何が簡単なのかを説明しよう。「泳ぐこと」なら、〈to swim〉だね。
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オススメしない説明の仕方
問題集や参考書によっては、〈It is … to ~〉について、次のような説明が載っています。ですが、勉強が苦手な子に教えるなら、私はこの説明の仕方はオススメしません。
「この It は形式主語であり、to 以下を指している。to 以下が真の主語である。」
オススメしない理由は、説明が抽象的だからです。
勉強が苦手な子は、抽象的なことを理解するのがあまり得意ではありません。「難しすぎて自分には無理」と思い込む子もいるでしょう。
大人の学習者だって、突然「形式主語」だの「真の主語」だの言われたら、「なんか面倒くさいぞ」と思いたくなりますよね(私なら確実になります…)。
説明は平たくシンプルに!
というわけで、〈It is … to ~〉については、次のように説明するのがオススメです。
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この It は日本語には訳さない。〈It is …〉というカタマリで、「…だ」という意味になるよ。つまり、〈It is … to ~〉は、「~することは、…だ」という意味だね。
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練習問題をさせるときの注意点
文の作り方を説明したら、ワークや問題集の練習問題に挑戦させてみてください。その際、注意すべきことが1つあります。
練習問題の和文には、「~することは…だ」ではなく、「~するのは…だ」と書いてあるときがあります。もちろん2つとも同じ意味。でも、それが分からずに問題が解けない子もいます。
ですので、「~するのは」は「~することは」と同じ意味だよ、と説明してあげてください。
ステップ4 〈It is … for だれだれ to ~〉という形を教える
〈It is … to ~.〉の応用として、〈It is … for だれだれ to ~.〉という文があります。「だれだれにとって、~することは…だ」という文ですね。
(※教科書にこのパターンの文がまだ出てきていない場合は、ステップ4は省いてください。)
このパターンを教える際、説明するべきポイントが2つあります。
説明するべきポイント その1
1つ目は、「〈for だれだれ〉というカタマリをどこに置くか」ということです。
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「だれだれにとって」は、〈for だれだれ〉というカタマリで表現するよ。このカタマリは、〈It is …〉のすぐ後ろに置こう。
(例)It is easy for Ken to swim.
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説明するべきポイント その2
2つ目のポイントは、「for の後ろに人称代名詞のみを置くときは、目的格を使う」ということです。たとえば、「私にとって」なら、〈for I〉ではなく、〈for me〉ですよね。
ただし子どもに説明する場合は、「人称代名詞」「目的格」といった抽象的な文法用語は避けます。具体的に教えたほうが断然理解しやすいですから。
人称代名詞の一覧表を覚えている子には、次のように説明します。
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〈for だれだれ〉の〈だれだれ〉に人称代名詞だけを入れる場合は、一覧表の左から3番目を使おう。「私にとって」なら、〈for I〉ではなくて、〈for me〉だね。
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人称代名詞の一覧表を覚えていない子には、次のように説明します。
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「私は~します」と言うときは、〈I〉を使うよね。でも、「私にとって」という場合は、〈for I〉としたらダメ。
「私に」と言うときは、me を使う。つまり、「私にとって」は、〈for me〉となるよ。
これと同じで、「彼に/彼女に/彼らに/私たちに」という場合、〈him / her / them / us〉 を使おう。
〈for だれだれ〉と言うときには、よ~く考えて単語を選ぼうね。
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たとえこのように説明しても、子どもが目的格をパッと覚えるわけではありません。
ですが少なくとも、「〈for だれだれ〉には要注意だ!」と意識することはできます。
それを意識させながら、〈It is … for だれだれ to ~.〉の練習問題に取り組ませてみてくださいね。
今回は、不定詞〈It is … to ~〉の教え方をご紹介しました。
子どもにとっては、覚えるべきことがどっさりあります。でも、それを小分けにして少しずつ教えれば大丈夫。基本的な文法問題にチャレンジしやすくなりますよ!
ぜひお試しください。