勉強が苦手な中学生に英語の受け身(受動態)を教えるには、どうすればいいか? その方法をご紹介します。
具体的には、下の2つのトピックについてお伝えしますね。
- 勉強が苦手な子に教えるときのポイント
- 受け身を教えるための5ステップ
この5ステップは、「基本的な受け身の肯定文を書けるようになる」ということを目標にしています。少しでも参考になれば幸いです。
※能動態から受け身への書き換えについては、「受け身への書き換え。勉強が苦手な中学生への教え方は?」を参考にしてみてください。
勉強が苦手な子に教えるときのポイント
受け身の単元では、覚えるべきことが山ほどあります。その大きな山を小分けにして、少しずつ教えていくことがポイントです。
複数のことをいっぺんに教えると、勉強が苦手な子は、情報を処理しきれなくなってしまいます。
たとえば、下のような「能動態と受け身の書き換え方」をいきなり見せられても、理解するのは大変でしょう。処理すべき情報がどっさりあるからです。
そこで、覚えるべきことを小分けにして、少しずつ教えていきましょう。その具体的な方法として、「受け身を教えるための5ステップ」をご紹介します。
受け身を教えるための5ステップ
5つのステップとは、こちらです。
- 受け身の意味を説明する
- 日本語で受け身を作らせる
- 過去分詞に慣れされる
- 肯定文の作り方を説明する
- 〈by ~〉を使った文を作らせる
各ステップの説明がすんだら、その都度、練習問題をさせてみてください。説明→練習問題→説明→練習問題……、という具合に進めていきます。
ステップ1. 受け身の意味を説明する
「“作られる”とか“読まれる”など、“~される”というのが受け身だよ」
そんなふうにサラッと説明しただけでは、「~する」との違いは、なかなか伝わりません。もう少し具体的に説明すると、理解しやすくなるでしょう。
たとえば、こんな感じです。
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A: 多くの人がこの新聞を読む。
B: この新聞は多くの人に読まれている。
A と B は、どちらもほぼ同じことを言っているけど、大きな違いがひとつあるよ。
Aは「多くの人」にスポットライトを当てて「多くの人が、読む」と言っている。
一方、Bは「新聞」にスポットライトを当てて、「新聞は、読まれている」と言っている。
ここで注意したいのは、「読まれている」という言葉なんだ。「新聞」の立場からすると、「読む」ではなく、「読まれている・読まれる」となるよね。
「多くの人」は「読む」側。つまり、動作を「する」側。「新聞」は「読まれる」側。つまり、動作を「される」側、ってことだよ。
こういう「~される」とか「~されている」という形のことを、「受け身」というよ。
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上のように具体的に説明すれば、「する」と「される」の違いが伝わりやすくなると思います。
ステップ2. 日本語で受け身を作らせる
受け身の意味を教えたら、日本語で受け身を作る練習をさせてみてください。
子どもの中には、受け身の英文をうまく訳せない子がいます。「~される・されている」という日本語がパッと出てこないのです。
そこで、「~される・されている」という形を作る練習を日本語でさせます。簡単なように思えますけど、意外とつまずく子もいるので注意が必要です。
(例)
作る → 作られる・作られている
書く → ( )・( )
読む → ( )・( )
使う → ( )・( )
ステップ3. 過去分詞に慣れされる
過去分詞とはどういうものか? それを子どもに説明します。たとえば、こんな感じです。
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受け身の文を作るには、過去分詞というものを使うよ。過去分詞は、動詞が変化したものなんだ。過去形とは別物だよ。
たとえば、「写真を撮る」というときの take は、次のように変化するよ。
原形 take → 過去形 took → 過去分詞 taken
過去分詞には「過去」という言葉が含まれているけど、過去とは関係ないよ。「過去」の話をしているわけではないんだ。
- 過去分詞は、受け身の文を作るときに使う。
- 過去形は、過去の話をするときに使う。
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動詞の活用表はコンパクトに!
教科書の後ろのほうに、不規則動詞の活用表が載っています。A-A-A型、A-B-A型、A-B-B型、A-B-C型という、あの長い長いリストですね。
勉強が苦手な子に教える場合、あの長いリストを見せるのはオススメしません。おそらく子どもは「こんなに覚えるの!? 自分にはムリ」とあきらめてしまうでしょう(過去形を覚えていない子の場合、特にそうです)。
そこで、受け身の単元でよく出てくる動詞を厳選してリストにします。
動詞の数は、「頑張れば覚えられそう」と子どもが思える程度にとどめておきましょう。子ども自身が「覚えられた!」という手応えを得やすくなります。(なかなか手応えを得られないと、勉強するのがイヤになりますよね。)
動詞リストの例
受け身の単元でよく出てくる動詞を、下に載せておきますね。
活用の仕方を、ざっくりと3パターンに分けてみました。「不規則動詞」「規則動詞」という用語を知らない子にも対応しています。
1. 原形や過去形とは、見た目が異なる
(例)
take → took → taken
speak → spoke → spoken
write → wrote → written
know → knew → known
2. 過去形と見た目が同じ
(例)
make → made → made
build → built → built
read → read → read(※発音注意)
3. ed をつける(過去形と見た目が同じ)
(例)
use → used → used
clean → cleaned → cleaned
love → loved → loved
ステップ4. 文の作り方を説明する
「主語の後ろに、〈be動詞+過去分詞〉というカタマリを置く」と説明します。
説明したら、現在形の文(am, are, is を使う文)の穴埋め問題に取り組ませましょう。
過去形の文(was, were を使う文)に入る前に、下の課題をクリアできるようにするのです。
- am, are, is を使い分ける
- 「~される・されている」という訳し方に慣れる
- 〈be動詞+過去分詞〉という形に慣れる
ステップ4(このステップ)では、「by(~によって)を使っていない穴埋め問題」にだけ取り組ませます。by の使い方はあと回しにして、まずは〈be動詞+過去分詞〉という形に慣れさせましょう。
「by を使っていない穴埋め問題」の例
「by を使っていない穴埋め問題」とは、下のようなものです。
これらの本は世界中で愛されている。
These books ( )( ) all over the world.
このコンピューターは毎日使われている。
This computer ( )( ) every day.
私の国では、英語が話されている。
English ( )( ) in my country.
過去形(~された)の教え方
子どもが現在形に慣れたら、過去形も教えましょう。たとえば、こんな感じです。
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「~される」ではなくて、「~された」というふうに、過去の話をする場合、be動詞を過去形にしよう。
過去形にするのは be動詞 だけ。過去分詞は過去分詞のままだよ。
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be動詞を正しく選べない場合
be動詞を使い分けられない子には、次のように整理しながら復習させるのがオススメです。
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まず、「現在の話」か「過去の話」かを考えよう。
- 現在なら、 am, are, is のどれかを使う。
- 過去なら、 was, were のどちらかを使う。
【現在の場合】
どの be動詞を使うかは、主語で決まる。
- I → am
- you → are
- I・you 以外 → 単数なら is, 複数なら are
【過去の場合】
- am と is → was になる
- are → were になる
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使い分けの教え方について、もっと詳しく知りたい方は、「be動詞の使い分け方。勉強が苦手な子に教えるときのコツ」を参考にしてみてください。
ステップ5. 〈by ~〉に慣れされる
子どもが〈be動詞+過去分詞〉というカタマリに慣れたところで、〈by ~〉について教えます。たとえば、こんな感じです。
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「誰々によって〇〇される」「何々によって〇〇される」と言う場合は、by という単語を使おう。byの後ろに、「誰々」「何々」を置くよ。
(例) by Satoru / by my grandmother
文を作るときには、〈by ~〉を過去分詞の後ろに置こう。
(例) This cake was made by Satoru.
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この時点では、〈by us / by him〉など、人称代名詞の目的格については、まだ触れないほうがいいです。(一度にあれこれ教えると、混乱しますからね。)
by を使った並べかえ問題を何問かさせたあと、〈by us / by him〉などについて説明しましょう。
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「私たちによって / 彼によって」などと言うときは、人称代名詞の表の左から3番目を使おう。
たとえば「彼によって」は、〈by he〉ではなくて〈by him〉となるんだ。
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説明したあとは、人称代名詞を使った穴埋め問題などで、子どもの理解度をチェックしましょう。
(例)この家は彼らによって建てられた。
This house was ( ) by ( ).
人称代名詞を覚えていない子の場合、表を見せながら練習問題に取り組ませてみてください。
※人称代名詞の教え方については、下の記事でご紹介しています。
上のように5つのステップを踏めば、基本的な受け身の肯定文を書けるようになると思います。ポイントは、
- 複数のことをいっぺんに教えない
- 説明→練習問題→説明→練習問題、を繰り返す
……ということです。ぜひ、実践してみてくださいね。