勉強が苦手な中学生に、主語の意味をどうやって教えるか? この記事ではその方法をご紹介します。
主語については、一般的に次のように説明されることが多いです。
【よくある説明】「誰々は(が)、~する・~だ」「何々は(が)、~する・~だ」の中の、「誰々は(が)」「何々は(が)」が主語である。
私も以前は上のように説明していました。けれども「この説明だけでは、勉強が苦手な子は理解しづらいだろう」と思うようになったのです。
では、なぜ理解しづらいのか? どう教えればいいのか? それをお伝えしますね。
〈この記事のトピック〉
- 「主語とは何か」を理解できない原因
- 「主語とは何か」を教えるときの2ステップ
- 主語の見つけ方
- オススメの練習問題
「主語とは何か」を理解できない原因
勉強が苦手な子が「主語とは何か」を理解できない原因は、2つ考えられます。
原因1. 「文はパーツに分解できる」ということを知らない
文は、いくつかのパーツに分解できます。
(例)私たちは / カレーを / 食べた。
ですが、「パーツに分解できる」ということを知らない子は、文全体をひとつのカタマリとして見てしまいます。
そのため、たとえ主語というパーツについて説明されても、意味がよくわからないでしょう。そもそもパーツの存在を知らなければ、パーツのひとつである主語を意識することはできませんからね。
原因2. 述語との結びつきを意識していない
勉強が苦手な子は、主語と述語(~する・~だ)を切り離して考えることがよくあります。主語を探すとき、述語との結びつきを考えることなく、単に「誰々は(が)」「何々は(が)」という形の言葉を探してしまうのです。
その結果、主語を正しく把握できなくなります。「は・が」のついている言葉であっても、主語とはかぎらないからです。
(例)私はカレーが好きだ。(→「カレーが」は主語ではない)
また、「人(誰々)やモノ(何々)を表す言葉は何でも主語だ」と思う子もいます。
このように、述語との結びつきを意識しない子は、主語の意味をきちんと理解できません。
では、どのように教えれば、子どもが理解しやすくなるのでしょう?
「主語とは何か」を教えるときの2ステップ
主語の意味を教えるときは、2つのステップを踏むのがオススメです。
- 「文はパーツに分解できる」と説明する
- 主語と述語をセットで意識させる
ステップ1. 「文はパーツに分解できる」と説明する
主語について教える前に、「文はパーツに分解できる」ということ自体を教えます。たとえば、こんな感じです。
~~~説明の例~~~
文というのは、文字がズラズラと並んで、ひとつの大きなカタマリを作っているように見えるね。
でも、文というのは、いくつかのパーツに分解できるんだよ。
(例)昨日 / 私たちは / カレーを / 食べた。
それぞれのパーツには役目がある。上の文は、その役目ごとに分解したんだ。
~~~例 終わり~~~
このように、「文はパーツに分解できる」と教えたあと、主語の話に持っていきます。
ステップ2. 主語と述語をセットで意識させる
主語について教えるときは、述語との結びつきを意識させることが大事です。そこで、主語について教えたあと、述語の説明もしましょう。
主語の説明
まずは、主語について子どもに説明します。たとえば、こんな感じです。
~~~説明の例~~~
文のパーツの中でも、特に大事なパーツが2つあるよ。ひとつ目は、「誰々が(は)・何々が(は)」というパーツだよ。
たとえば、下の2つの文を見てみよう。
- いつも親切だ。
- あっと言う間に壊れた。
いきなり上のように言われても、意味がわからないよね。「誰が親切なの?」「何が壊れたの?」とツッコミたくなる。
そこで、「誰が」「何が」という情報を付け加えてみるよ。
- 山本さんはいつも親切だ。
- スマホがあっと言う間に壊れた。
これなら意味がわかるね。
このように、文には基本的に「誰々が(は)・何々が(は)」というパーツが必要なんだ。このパーツのことを「主語」というよ。
~~~例 終わり~~~
述語の説明
続いて、述語について説明しましょう。そのとき、「述語」の代わりに「(文の)結論」という言葉を使って説明すると、勉強が苦手な子も理解しやすくなると思います。
~~~説明の例~~~
大事なパーツの2つ目は、「~する・~だ」というパーツだよ。
たとえば、下の文を見てみよう。
- 山本さんはいつも。
- スマホがあっと言う間に。
上のように言われたら、「いつも何?」「あっと言う間にどうしたの?」と、結論を知りたくなるよね。
そこで、文の結論を付け加えてみよう。
- 山本さんはいつも親切だ。
- スマホがあっと言う間に壊れた。
ちゃんと意味がわかる文になったね。このように、文には「~する・~だ」という「結論」のパーツも必要なんだ。
つまり文には、「誰々が(は)・何々が(は)」という「主語」と、「~する・~だ」という「結論」が必要だ、ということだね。
~~~例 終わり~~~
上のように、主語と述語(結論)をセットで教えれば、子どもも2つの結びつきを意識しやすくなるでしょう。
主語の見つけ方
主語や述語(結論)について説明したら、主語を見つける練習をさせましょう。その前に、主語の見つけ方を教えてあげてください。
【主語の見つけ方】
1. 文の結論に注目する
いきなり主語を探すのではなく、まず、文の結論に注目します。
- 私の兄は毎日図書館に行く。
- このピザはおいしかった。
上の文の場合、「行く」「おいしかった」が結論ですね。
2. 「誰が / 何が」を考える
結論に結びつけながら、「誰が / 何が」を考えます。
- 私の兄は毎日図書館に行く。→誰が行くの?
- このピザはおいしかった。→何がおいしかったの?
結論に対し、「誰が / 何が」を考える。そうすれば、主語が見えてきます。上の文の場合、「私の兄は」「このピザは」が主語ですね。
オススメの練習問題
主語を見つける練習問題の例を7つご紹介します。いずれも、子どもがつまずきやすい文です。
1. 先週ミキが東京に行った。
【主語】ミキが
【よくある誤答】先週
「文頭にある言葉が主語だ」と思ってしまう子がいます。
「主語は文の途中にくることもある。文の最初にあるものが主語、というわけではない」などと説明してあげてください。
2. 大きな犬がタクヤに向かってほえた。
【主語】大きな犬が
【よくある誤答】タクヤ
人を表す言葉があれば、それが主語だと思ってしまう。そういう間違いがよくあります。文の結論に注目させ、「ほえたのはタクヤかどうか」を考えさせてみてください。
3. ユカはサッカーが好きだ。/ 私はこの本が欲しい。
【主語】ユカは / 私は
【よくある誤答】サッカーが / この本が
「が」がついている言葉は全部主語だ、と思ってしまう子がいます。「好きだ・欲しい」という気持ちになっているのは誰か? それを考えさせれば、子どもも主語を見つけられると思います。
4. あれがこの町の公園だ。
【主語】あれが
【よくある誤答】町
「これが(は)・あれが(は)」が出てくると、とたんに主語がわからなくなる、という子がいます。あまり主語っぽくない、と思うのかもしれませんね。
文の結論「公園だ」に注目させ、「何が公園なのか」を考えさせてみてください。
5. 祖父が私に手紙をくれた。
【主語】祖父が
【よくある誤答】私
「私」という単語を目にすると、反射的に「私=主語」と思ってしまう子がいます。
6. 新しい先生が彼らの学校に来た。
【主語】新しい先生が
【よくある誤答】彼ら
「彼」「彼女」「彼ら」「あなた」といった人称代名詞は全部主語だ、と思っている子もいます。
7. 私の国では英語が話されている。(※受け身を習っている子向けの問題)
【主語】英語が
【よくある誤答】私
文の結論に注目させ、「何が話されているのか」を考えさせてみてください。
以上、主語の教え方についてお伝えしました。主語について教えるときには、述語(結論)との結びつきを意識させるのがポイントです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。