勉強が苦手な中学生に英語を教えるとき、こんなお悩みはありませんか?
- 参考書や問題集の解説どおりに教えても、子どもが文法を理解できない。
- なかなか知識が定着しない。
勉強が苦手な子に英語を教えるのは難しいですよね。なぜ難しいかと言うと、勉強が苦手な子にはある特徴があるからです。
でも、その特徴を踏まえた上で、5つのポイントに気をつけて教えれば、子どもたちも文法をぐんと理解しやすくなるんですよ。
それでは、「勉強が苦手な中学生の特徴」と「教えるときの5つのポイント」について、順にお伝えしますね。
勉強が苦手な中学生の特徴とは?
勉強が苦手な中学生には、次のような特徴が見られます。
- 話のポイントをつかむのが苦手
- 複数の情報を一度に処理できない
- 抽象的に考えるのが苦手
- ひとりで復習や宿題をするのが難しい
話のポイントをつかむのが苦手
勉強が苦手な子は何かの説明を聞いたときに、「一番重要な情報」と「そのほかの情報」をうまく区別できません。どの情報も横並びになってしまうのです。
その結果、一番重要な情報がほかの情報の中に埋もれてしまう、ということがあります。
一番重要な情報が何なのかが分かっていないと、「今習った文法は要するに〇〇ってことか」と、自分の中で落とし込めません。つまり文法の解説を聞いていても、「要するに何?」を意識できていないのです。
授業の最後に「今日はどんな文法を習った?」と聞かれても、「えっ? 何だっけ……?」となったりすることがあります。
複数の情報を一度に処理できない
勉強が苦手な子は、複数の情報を同時に処理するのがうまくありません。一度にあれもこれも解説されると、その情報量に圧倒され、頭の中を整理できなくなるのです。
ですので、文法の解説に耳を傾けていたとしても、いざ練習問題に取り組む段になると、「さっき聞いた解説の何を踏まえればよいのかが分からない」「何をするべきかが分からない」となることがあります。
抽象的に考えるのが苦手
「抽象的に考える」というと何やら小難しく聞こえますけど、要は、「さまざまな物事の共通点を見つけ、ひとつのグループとして物事をとらえる」ということです。つまり、「共通点ごとに情報を分類する」ということですね。
そのように抽象的に考えることが苦手だと、品詞というものをあまり理解できません。「名詞」「助動詞」など、グループごとの特徴をとらえにくいのです。
また、抽象的な話を理解するのに、ちょっと時間がかかります。
ひとりで復習や宿題をするのが難しい
私は以前、「復習や宿題をするかどうかは、やる気次第!」と思っていました。
でも、のちに気づいたのです。「やる気だけの問題ではない。復習や宿題をするのは、大人が思うほど簡単なことではないのだ」と。
復習や宿題をするというのは、大人が思っている以上に複雑で難しい行為なのです。
復習するには、ノートやプリントの中から「授業内容のポイント」を探し出さないとなりません。
また、宿題(文法問題など)の解き方が分からない場合、解き方が載っていそうな箇所に当たりを付け、調べる必要があります。
ですが、こういうことは勉強が苦手な子にとって簡単ではありません。話のポイントをつかんだり、情報を整理したりするのが苦手だからです。
そして復習や宿題をしない結果、知識がなかなか定着しません。
ここまで、勉強が苦手な中学生の特徴を見てきました。では、その特徴を踏まえた上で、何に気をつけて教えればいいのでしょう?
勉強が苦手な中学生に英語を教えるときのポイント
勉強が苦手な子に英語を教えるときのポイントは下の5つです。
- ざっくり教える
- 情報を小出しにする
- 抽象的な説明は後回しにする
- 「忘れている」ということを前提に教える
- すぐに答えを与えない
(1) ざっくり教える
ざっくり教えるというのは、具体的には次の3つを指しています。
・基本の「き」だけ教える
・ひとまず例外は教えない
・細かいルールには触れず、シンプルに説明する
要は、「細かい枝や葉っぱを落とし、太い幹だけ残す」ということです。
勉強が苦手な子は、話のポイントをつかむのがうまくありません。そのため細かいことまであれもこれも教わると、何が一番大事なのかが分からなくなってしまいます。「肝心なことさえ印象に残らない」ということにもなりかねません。
そうならないように、細かい枝や葉は思い切ってバッサリ落とし、太い幹だけ残します。基本の「き」だけ教えることに集中するのです。そうやってざっくり教えたほうが、子どもが文法を理解しやすくなります。
たとえば「複数形の作り方」の場合、基本の「き」である s や es の付け方だけ教えます。
下のような例外はひとまず教えません。
- f/fe で終わる名詞は、f/feを v に変えて es をつける
- 不規則に変化する名詞(man、womanなど)
- 単数と複数が同じ形の名詞
さらに言うと、es の付け方さえもざっくりと教えます。「s じゃなくて es を付ける名詞もあるよ」と説明し、その例をいくつか挙げるだけにしておくのです。
es の付け方に関する細かいルールまで教えると、勉強が苦手な子は情報を処理しきれなくなってしまいます。「情報がごちゃごちゃしすぎて、肝心の s を付けることさえ記憶に残らなかった」とならないように、思い切ってざっくり教えるのも一つの手です。
「ざっくり教える」ことについてもっと詳しく知りたい方は、勉強が苦手な子に英語を教えるときは、完璧主義を手放すのがコツをご覧ください。
(2) 情報を小出しにする
上で見てきたように、勉強が苦手な子には基本の「き」である「太い幹」の部分だけ教えます。ただし、太い幹をそのままド~ンと子どもに与えるわけではありません。
太い幹をいくつかに分けて、小出しにするのです。
勉強が苦手な子は、たくさんの情報を一度に処理するのがうまくありません。一度にガーッと解説したり、複雑な手順を説明したりすると、子どもは結局何をしていいのか分からなくなってしまいます。
そこで、教えるべきことを細分化し、少しずつ子どもに提示するのです。
たとえば「3単現の S 」の単元で、下のルールを教えるとします。
「主語が I・you 以外で単数のとき、一般動詞に s を付ける。ただし過去の話をする場合、s は付けない」
このとき、ルールを次のように細分化して教えます。
- 「I・you 以外の主語」の例を挙げる
- 「I・you 以外の主語」のうち、単数はどれかを考えさせる
- 「主語が I・you 以外で単数」のときは S を付ける、と教える
- 「過去の話をする場合、S は付けない」と補足する。
このように情報を小出しにし、少しずつ文法に慣れさせていくのです。勉強が苦手な子も基礎的な文法問題にチャレンジしやすくなりますよ。
(「3単現の S」の教え方についてもっと詳しく知りたい方は、下の記事をご覧ください。)
〈3単現の S 〉の教え方。中学生に分かりやすく説明する方法とは?
【3単現の S】中学生によくある間違い5つ。教えるときの注意点は?
(3) 抽象的な説明は後回しにする
文法を教えるときには、具体的な話から始めます。抽象的な解説は後回しにするのです。
次のように、抽象的な話から始めるのはオススメしません。
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今日は不定詞というのを勉強しよう。不定詞とは、〈to + 動詞の原形〉というカタマリのことだよ。
不定詞にはいくつか使い方があるんだけど、その1つが「副詞的用法」と呼ばれるものなんだ。副詞的用法は、動作の目的を表すことができるよ。
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こういう抽象的な話をいきなりすると、子どもは「なんか面倒くさいことが始まったぞ。嫌だな……」と思ってしまうかもしれません。
「これから何をするのか・自分がどこに向かっているのか」がよく見えないからです。
そうならないように、文法を教えるときには具体的な話から始めます。
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今日は、「~するために」という表現を覚えよう。
たとえば、明日ショッピングモールに行くとするよ。なんのために行くかというと、「ペンを買うために」とか「ゲームをするために」とか、いろいろ目的があるよね。
そういう、「~するために」という言い方を勉強しよう。
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このように、子どもになじみのある具体的な話から入ると、「どんなことを勉強するのか」が子どもに伝わりやすくなります。そして、新しい文法も理解しやすくなるのです。
まずは具体的に説明し、そのあと抽象的な話を出す。これが大事です。
(4) 「忘れている」ということを前提に教える
復習しない子は知識が定着しにくいため、前回習ったことも覚えていない、ということがよくあります。
ですので、「これまでの内容を覚えている」という前提で授業を進めると、子どもがついて来られません。
では、どうするか? 「忘れている」ということを前提に教えるのです。
たとえば、授業の始めにおさらいの時間を(少しでいいので)設けます。「最低これだけは思い出しておかないと、今回の授業を理解できない」というポイントがありますよね。それをさっとおさらいするのです。
たとえば、今回〈have to〉の否定文を教えるなら、次の2つをおさらいしておきます。
- 「~しなければならない」と言うときは、どんなカタマリを使ったか?
- 〈have to〉の代わりに〈has to〉を使うのは、どんなときだったか?
「最低これだけは思い出しておかないと!」というポイントをさっとおさらいする。そうするだけでも、新しい文法をぐんと理解しやすくなります。
また、これまで習ったことを思い出させるには、何かにつけ質問するのも効果的です。
たとえば、文法の説明をするときに「主語」という用語が出てきたら、「主語ってどういうやつだった?」と尋ねます。文中に eats という動詞が出てきたら、「eat に s がついているけど、どうしてかな?」と尋ねます。
このように、「忘れている」ということを前提に授業を進め、「思い出させる機会」をちょこちょこ作る。そうすれば、少しずつですが知識が定着してきます。
(5) すぐに答えを与えない
子どもが解き間違えたり、単語を思い出せなかったりしたとき、すぐには答えを教えません。ひとまず考えさせるのです。
たとえば、間違った be動詞を使って英文を書いたら、「1カ所、惜しいところがあるよ。どこだと思う?」と考えさせます。
最初から「そこは is じゃなくて are だよ」などと答えを教えたりはしません。ひとまず考えさせるのです。
そして、「どこをどう直すべきか」「なぜそう直すべきなのか」について、子ども自身に説明させます。
結果的に子どもの説明が的外れでも構いません。大事なのは、「考えてみる」というプロセス。このプロセスがあると、正解を聞いたときに断然、記憶に残りやすくなります。
逆に、あっさりと正解を教えてもらうと、「ふ~ん」で終わってしまうものです。
ひとまず考えてみる。そして自分の言葉で説明する。それを繰り返していくと知識が定着しやすくなりますし、考える力も少しずつついてきます。
以上、「勉強が苦手な子への教え方 5つのポイント」をお伝えしました。どれかひとつでも「これは使えそう!」というものがあったら、ぜひ実践してみてくださいね。