「現在完了形は教えるべきことが多いので、何をどんな順で説明すればいいのかわからない」
「どんな手順で教えれば、勉強が苦手な子も理解しやすくなるのか?」
そうお悩みの方のために、今回は経験用法(否定文・疑問文)の教え方をご紹介します。
少し時間はかかりますが、ゆっくりとしたペースで教える方法ですので、勉強が苦手な子もついてきやすいです。よかったら参考にしてみてください。
肯定文の復習から入る
否定文・疑問文に入る前に、まずはウォーミングアップとして肯定文(ふつうの文)を復習させましょう。
経験用法(肯定文)の教え方については、下の記事をチェックしてみてください。
復習をオススメする理由は?
肯定文の作り方を覚えていなければ、否定文・疑問文は作れません。土台(肯定文)の構造を知らなければ、それを変化させることはできませんよね。
そこで、肯定文の復習が必要なのです。
「教えたばかりだから復習しなくても大丈夫」「前回、丁寧に教えたから復習は不要」と思う方もいるでしょう。
ですが一度教えたとしても、子どもが覚えているとはかぎりません。
むしろ「一度習っただけでは忘れてしまう」のがふつうです。どんな文法であれ、何度も繰り返し使ううちに、ようやく知識が定着するものです。
ですので子どもに文法を教えるときは、「これまでの内容を忘れている」ということを前提に授業を進めるのが現実的です。
少し時間はかかりますが、復習しておいたほうが子どもが授業についてきやすくなりますよ。
復習のポイント
経験用法の肯定文を復習させるときは、下の4つのポイントを押さえましょう。説明文や問題文の空欄に何が入るか、子どもに考えさせてみてください。
〈復習のポイント〉
●「~したことがある」というようにこれまでの経験について語るときは、現在完了形を使う。
現在完了形というのは、〈 _ + _ 〉というカタマリのこと。主語が「I・you 以外で単数」の場合は、〈 _ + _ 〉というカタマリを使う。
(例)
私はこの本を読んだことがあります。
I _ _ this book.
彼はパンケーキを作ったことがあります。
He _ _ pancakes.
●〈have+過去分詞〉というカタマリ
●〈has+過去分詞〉というカタマリ
● I have read this book.
● He has made pancakes.
●「~に行ったことがある」というときは、〈 _ _ _ 〉というカタマリを使う。主語が「I・you以外で単数」の場合は、〈 _ _ _ 〉というカタマリを使う。
(例) 私たちは北海道に行ったことがあります。
We _ _ _ Hokkaido.
●〈have been to〉というカタマリ
●〈has been to〉というカタマリ
● We have been to Hokkaido.
●「以前(~したことがある)」と言うには文末に〈 _ 〉という語を置く。
(例) 彼女は以前、この動画を見たことがあります。
She _ _ this video _.
●〈before〉という語
● She has watched this video before.
●経験した回数を表す言葉は、文末に置く。
(例) 私は2回、東京に行ったことがあります。
I _ _ _ Tokyo _.
● I have been to Tokyo twice.
否定文の作り方を教える
最初に「どんな文を作るのか」を説明します。子どもがイメージしやすいように、具体的な日本語の例文を挙げましょう。
〈説明の例〉
これまでの授業で「~したことがある」という文を作ってきたよね。次は「一度も~したことがない」という否定文を作ろう。何かの経験がまったくない、という意味の文だよ。
(例)
私は一度もたこ焼きを作ったことがありません。
ユカは一度も京都に行ったことがありません。
次に、否定文の作り方について、下のポイントを子どもに伝えます。
〈否定文の作り方〉
「一度も~したことがない」と言うには、have や has の後ろに never という単語を置く。never には「一度も~ない」という意味がある。
私は一度もクマを見たことがありません。
I have never seen a bear.
祖父は一度もピザを食べたことがありません。
My grandfather has never eaten pizza.
説明したあとは文法問題に取り組ませて、子どもが理解したか確認してください。
日本語と同じ意味になるように、下線部に適切な語を入れましょう。
1. 私は一度もラグビーをしたことがありません。
I _ _ _ rugby.
2. 兄は一度も京都に行ったことがありません。
My brother _ _ _ to Kyoto.
解答
1. have never played
2. has never been
疑問文の作り方を教える
覚えるべきことを全部一度に説明すると、勉強が苦手な子は情報を整理しきれなくなってしまいます。小分けにして少しずつ教えましょう。
時間はかかりますが、ゆっくり進めたほうが結局は子どもが理解しやすくなります。急がば回れ、です。
基本的な文の作り方を教える
まず「どんな文を作るのか」を説明しましょう。子どもがイメージしやすいように、具体例を挙げるのがポイントです。
〈説明の例〉
「~したことがありますか」とたずねる疑問文を作ろう。
(例)
あなたはクマを見たことがありますか。
ケンは京都に行ったことがありますか。
次に、基本的な疑問文の作り方について下の2点を伝えましょう。
〈基本的な疑問文の作り方〉
●「~したことがありますか」とたずねるときは、have (has)を主語の前に出す。

●主語の前に Do (Does, Did) や be動詞を置かない。
× Do you have seen a bear?
× Are you have seen a bear?
書き換え問題に取り組ませて、「have を主語の前に出す」というルールに慣れさせてくださいね。
日本語と同じ意味になるように、英文を書き換えましょう。
1. あなたは奈良に行ったことがありますか。
You have been to Nara.
2. スミスさんはすしを食べたことがありますか。
Ms. Smith has eaten sushi.
解答
1. Have you been to Nara?
2. Has Ms. Smith eaten sushi?
everの使い方を教える
経験用法の疑問文でよく出てくる ever について、子どもに説明しましょう。
〈ever の使い方〉
「今までに(一度でもいいから)~したことがありますか」と強調してたずねるときには、主語の後ろに ever を置く。
あなたは今までに(一度でもいいから)クマを見たことがありますか。
Have you ever seen a bear?
説明のあとは練習問題にチャレンジさせてみてください。
日本語と同じ意味になるように、下線部に適切な語を入れましょう。
1. あなたは今までに大阪に行ったことはありますか。
Have you _ _ to Osaka?
2. タクヤは今までにラグビーをしたことがありますか。
Has Takuya _ _ rugby?
解答
1. ever been
2. ever played
〈Have you ever ~?〉のカタマリは、文法問題や英作文でよく出てきます。
カタマリを記憶に残りやすくするには、書いて練習するだけではなく、下のように耳から覚えるのもポイントです。
●文法問題を解いたら、できあがった文を音読する。(書いて終わり、にしない)
●大人が英文をリズムよく読んであげ、それを子どもが繰り返し聞く。
回数のたずね方を教える
「何回~したことがあるか」とたずねる方法を説明しましょう。
〈経験した回数のたずね方〉
「何回~したことがありますか」と回数をたずねる場合は、〈How many times〉を疑問文の頭に置く。
〈how many〉は「いくつ」、〈times〉は「回」という意味。2つを合わせると「何回」という意味になる。
あなたは何回、東京に行ったことがありますか。
How many times have you been to Tokyo?
説明のあとは、並べかえ問題などにチャレンジさせましょう。
日本語と同じ意味になるように( )内の語句を並べかえましょう。
1. あなたは何回この本を読んだことがありますか。
( this book / times / read / have / how many / you )?
2. エリは何回京都を訪れたことがありますか。
( visited / has / times / Kyoto / how many / Eri )?
解答
1. How many times have you read this book?
2. How many times has Eri visited Kyoto?
答え方を教える
〈How many times ~〉で聞かれた場合と、〈Have (Has) ~〉で聞かれた場合では答え方が異なります。その点を強調して教えましょう。
〈説明の例〉
「今までに~したことがありますか」と聞かれたら、「はい」「いいえ」で答えよう。
「何回~したことがありますか」と聞かれたら、「1回」「2回」など回数を言おう。
質問の種類によって答え方が変わる、というのがポイントだよ。どんなことを聞かれているのか? それをよく考えよう。
上のように説明したあと、英語での答え方を教えましょう。
〈答え方〉
●今までに~したことがありますか。
(例) Have you ever read this book?
「はい」のとき
Yes, 主語 have (has).
「いいえ」のとき
No, 主語 have not (has not).
No, 主語 haven’t (hasn’t).
●何回~したことがありますか。
(例) How many times have you read this book?
1回のとき Once.
2回のとき Twice.
3回のとき Three times.
試験では下のような問題が出されることがあります。
習熟度によっては難しく感じられるかもしれませんが、挑戦させてみてください。問題に慣れさせておくことも大事です。
対話文が成り立つように、下線部に適切な語を入れましょう。
1.
A: Have you ever watched this video?
B: No, I _.
2.
A: _ _ _ have you been to Kyoto?
B: Twice.
解答
1. haven’t
2. How many times
以上、経験用法の否定文・疑問文についてお伝えしました。
授業時間が限られていると、つい一気にガーッと説明したくなりますよね。でも、できるだけ少しずつ説明し、そのつど演習をさせてみてください。
子どもが「解けた!」という手応えを得やすくなりますし、教える側も子どもの理解度を把握しやすくなります。