勉強が苦手な子(特に、定期試験で平均点を下回る子)にとって、人称代名詞を覚えるのは大変なことです。
では、少しでも覚えやすくするために、教える側はどうすればいいのか? そのアイデアをご紹介します。
具体的には、次の4つについてお伝えしますね。
- 「日本語と英語の違い」を説明する
- 覚える作業を3つのステップに分ける
- 覚えたあとの注意点
- 勉強が遅れている子への対処は?
「日本語と英語の違い」を説明する
「人称代名詞を覚える」という課題を出す前に、「日本語と英語の違い」を子どもに説明しておく必要があります。
その違いとは、「日本語には助詞(は・の・を、など)があるが、英語にはない」ということです。
日本語の場合、たとえば「私」に助詞を付けて、「私は・私の・私を」と表現しますよね。一方、英語の場合、〈I・my・me〉の中に助詞まで含まれている、と言えます。
その違いを子どもに説明する必要があるのです。
日本語と英語の違いを説明する理由は?
なぜ違いを説明する必要があるかというと、〈I・my・me〉はどれも単に「私」という意味だ、と思っている子がいるからです。
〈I・my・me〉の意味上の区別がつかないと、暗記する気など起きないでしょう。「“私”って言いたいなら、I だけ使えばよくない?」と思いたくなりますからね。
そこで、教える側は日本語と英語の違いを説明し、「I だけではなく my や me も存在するワケ」を子どもに理解してもらう必要があるのです。
では、どうやって説明すればいいのか?
助詞を強調して説明する
次のように、助詞を強調すると理解しやすくなるでしょう。
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日本語と英語には、おもしろい違いがあるよ。
たとえば文を書くときに、「私」という単語を使うことがよくあるよね。「私は」「私の」「私を」などと言ったりするでしょ。
日本語の場合、「私」の後ろに、「は・の・を」という文字がくっついているね。
一方、英語の場合、2つのパーツじゃなくて、単語1つだけで表現するよ。
私は I
私の my
私を me
英語の場合、「私は」は I だけど、「私を」と言うときには単語全体をまるっと変えて me にするんだ。me には「私」だけじゃなくて、「を」まで含まれているよ。
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このように、「は・の・を」をといった助詞を強調するのがポイントです。
また、「私」以外のケースについても、次のような説明を付け足してくださいね。
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「私」だけじゃなくて、「彼」などの場合も、単語全体をまるっと変えるよ。たとえば、「彼は」は he だけど、「彼を」と言うときは him にする。単語全体をまるっと変えるんだ。
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日本語と英語の違いを子どもが理解したら、いよいよ人称代名詞を覚えていきます。
覚える作業を3つのステップに分ける
「人称代名詞を覚える」と一口に言っても、その実質的な内容は3つあります。
- 読む(発音する)練習をする
- 暗記する
- 書く練習をする
この3つを全部いっぺんにするのはオススメしません。負荷が大きすぎるため、子どもが「自分にはムリ」と思うかもしれないからです。
そこで、ひとつずつ順番に取り組みます。
ステップ1. 読む(発音する)練習をする
ステップ1では、人称代名詞の一覧表を見ながら、リズムよく読めるように練習します。それぞれの人称代名詞をパッと発音でき、一覧表全体をスラスラ読めるようにするのです。
この時点で暗記する必要はありません。とにかく「読む(発音する)」ことだけに集中します。
大人が一度、〈アイ・マイ・ミー・マイン〉〈ユー・ユア・ユー・ユアズ〉などとリズムよく読んでみせてください。そうすれば、子どもも「あんな感じで読めばいいんだな」とわかりますからね。
「はが・の・をに・のもの」もリズムよく読む
人称代名詞の一覧表では、上のほうに「主格(~は・が)」「所有格(~の)」「目的格(~を・に)」「所有代名詞(~のもの)」などと書いてありますよね。
その中の「はが・の・をに・のもの」も、リズムよく読ませてください。というのも、「はが・の・をに・のもの」を意識しておかないと、のちのち人称代名詞を暗記したとしても使いこなせないからです。
ステップ2. 暗記する
ステップ2では、人称代名詞を暗記し、リズムよく言えるようにします。つづりを覚える前にまずは「音」だけを暗記する、というわけです。
暗記のコツ
暗記するときのコツは2つあります。
- 人称代名詞の一覧表を小分けにして覚える
- インプットとアウトプットをセットで行う
具体的には、次のようにして覚えます。
(1) インプット
「暗記するんだ」と意識しながら、まずは〈I・my・me・mine〉というカタマリだけを3回くらい言う。スラスラ言えたら、次は〈you・your・you・yours〉というカタマリだけを3回くらい言う。
(2) アウトプット
どのくらい覚えているか自分でテストするために、一覧表を見ずに〈I・my・me・mine〉と〈you・your・you・yours〉を続けて言ってみる。
このように、「小分けにして練習する」(インプット)→「覚えているか自分でテストしてみる」(アウトプット)という作業をセットで行います。
一覧表を小分けにするのは、「覚えられた!」という小さな達成感を得やすくするためです。そういう手ごたえがあると、やる気を維持しやすくなりますからね。
最初は大人がサポートする
勉強が苦手な子は「暗記する」ということに慣れていないため、最初は大人がサポートしてあげてください。
勉強が苦手な子の中には、「自分でテストしてみる」というアウトプットの経験がない子もいます。
そこで、インプットとアウトプットを大人と一緒に何度か体験させるのです。そうすれば、「こんなふうにして暗記すればいいんだな」と子どもも理解できるはずです。
ステップ3. 書く練習をする
ステップ3では、人称代名詞を書いて覚えます。書くときも、一覧表を小分けにしましょう。
たとえば、まずは「私」にしぼって〈I・my・me・mine〉を3回ほど書いて練習する。そのあと表を見ずに書けるかどうか、自分でテストしてみる。それを繰り返します。
同じ単語を10回も20回も続けて書くのは、やめたほうがいいです。覚えることではなく「書くこと」が目的になり、ただの作業になってしまいますからね。
なお、下のような特徴を知っておけば、子どももつづりを覚えやすくなるでしょう。
- 〈they・their・them・theirs〉→ どれも the から始まる。
- 〈he・his・him・his〉→ he 以外は hi で始まる(全部 he で書き始める子がいるので要注意)
- your, her, our, their → 最後に s をつけるだけで、「~のもの」という意味になる(yours, hers, ours, theirs)
覚えたあとの注意点
人称代名詞を覚えたら、一覧表を埋める練習をするのが一般的ですが、それだけではなく、文法問題にも取り組ませてください。
というのも、一覧表を埋めるのはあくまで「作業」だからです。埋めることができるからといって、人称代名詞を使いこなせるわけではありません。使いこなせるようになるには、実際に文中で使ってみるのが一番です。
勉強が遅れている子への対処は?
学校の授業から遅れている子の場合、人称代名詞を覚えることだけにそれほど時間をかけられません。
そんなときは、「はが・の・をに・のもの」のうち、「はが・の・をに」だけを覚えるのも、ひとつの手です。たとえば〈I・my・me〉だけ覚えて、〈mine〉は捨てるのです。
中学英語において、「~のもの」は、ほかの3つに比べてあまり出番がありません。そこで、よく出てくる3つだけに時間とエネルギーを集中させるわけです。
あるいは、複数(「私たち」と「彼ら」)は横に置いておき、ひとまず単数だけ覚える、というのもいいかもしれません。
いずれにせよ、全部覚えようとして中途半端に終わるより、一部だけでも確実に覚えるほうが断然いいです。全部覚えるのが現実的でない場合は、こんなふうに割り切ることも大事だと思います。
以上、人称代名詞を覚えやすくするためのアイデアをご紹介しました。