勉強が苦手な子に英語を教えるときは、完璧主義を手放すのがコツ

勉強が苦手な子に英語を教えるときは完璧主義を手放すのがコツ コラム

勉強が苦手な子に英語を教えるとき、「すべてをきちんと教えなくてはならない」という完璧主義に陥ると、子どもにとってマイナスになることがあります。

時には完璧主義を手放し、いい意味でざっくり教えたほうがうまくいきますよ。

なぜ、ざっくり教えたほうがいいのか? 「ざっくり教える」とはどういうことか? それをご説明していきますね。

英語を教える上での完璧主義とは?

以前の私は、英語を教えるとき、よくこんなふうに考えていました。

  • それぞれの単元に含まれる文法を、すべて授業内容に盛り込むべきだ
  • 文法の例外的な用法も、きちんと説明しないとならない
  • 学校の試験でよく出るパターンの問題を、幅広くカバーしておきたい

要するに、「すべてを網羅したい」と思っていたんですね。これが、英語を教える上での「完璧主義」です。

もちろん、丁寧に教えることは大切です。でも、「すべて網羅する」という完璧主義の教え方は、勉強が苦手な子に対しては機能しませんでした。

そこで「ざっくり教える」というやり方に方針を変えたのです。

「ざっくり教える」とは?

私が実践している「ざっくり教える方法」は、次のとおりです。

  • 基本の「き」だけ教える
  • ひとまず例外は教えない
  • 細かいルールには触れず、シンプルに説明する

具体例はのちほど挙げますが、要は「枝や葉っぱを落とし、幹だけ残す」ということ。そこそこ太い枝も思い切ってバッサリ落としましょう。

この教え方を実践して気づいたのは、「勉強が苦手な子どもたちが、文法を理解しやすくなった」ということです。

「ざっくり教える」のが効果的な理由

なぜ「ざっくり教える」のが効果的かと言うと、勉強が苦手な子には、次の2つの特徴があるからです。

1 要点をとらえるのが得意ではない

新しい文法を教わったとき、情報を整理する。そして「要するに、ここに気をつければいいんだな」と気づく。そういうことを、勉強が苦手な子はうまくできません。

情報がいっぺんにたくさん提示されると、「一番重要なポイント」が「その他の情報」の中に埋もれ、見えなくなるんですね。教わることが多くなると、そうなる危険性が高くなります。

でも、ざっくり教えた場合、子どもの意識が「一番重要なポイント」に向きやすくなり、理解度が上がるのです。

2「情報を分類して記憶する」のが苦手

情報を記憶するときには、カテゴリーごとに情報を分類することが大事です。きちんと分類し、頭の中を整理整頓しておけば、記憶した情報を活用しやすくなります。

ですが、勉強が苦手な子は、情報を分類するのが得意ではありません。ひとつひとつの情報をバラバラに記憶してしまうのです。

なので、一度に教わることが多すぎると、頭の中はゴチャゴチャになります。

それを防ぐためにも、ざっくり教えるという方法は効果的です。細かいことには触れずシンプルに説明すれば、子どもも情報を整理しやすくなります

ざっくり教えれば、子どもの自信とやる気にもつながる

最初から細かいことまでカバーするより、一番重要なポイントに集中する。そして、基礎的な問題を解けるようにする。

そのほうが、子どもたちの理解度が上がり、自信にもつながります。

細かいことまで教わり情報を整理しきれなくなるより、基礎的な問題だけでも自力で解けたほうが、断然いいですよね。

また、ざっくり教えれば、子どものやる気を維持しやすくなります。

細かいルールや例外の用法まで一度に提示されたら、子どもも「こんなに覚えるの、ムリ!」と思うでしょう。

私がそのことに気づかされたのは、「たった5分で英語のやる気を上げる66の方法」(関正生 著 / 新星出版社)という本にあった、このアドバイスがきっかけでした。

例外は無視する

「たった5分で英語のやる気を上げる66の方法」(関正生 著 / 新星出版社)

なんとも大胆で衝撃的なアドバイスですが、じつは、とても現実的で実践しやすいのです。

英語学習者が意欲を維持するためには、まずは基本のルールに集中しましょう、と著者は提案しています。例外はあとで覚えればいい、というわけです。

確かに、最初から細かい例外まで網羅しようとすると、大人の学習者だって心が折れそうですよね。

ましてや、勉強が苦手な子ならなおさらです。

子どものやる気を維持するためにも、完璧主義を手放し、ひとまずざっくり教える。そういうやり方がオススメです。

「ざっくり教える」の例

最後に、「ざっくり教える」とは具体的にどういうことなのか、「名詞の複数形」を例にご説明します。

まず、複数形の作り方(下記)を見てください。問題集や参考書によく載っているのですが、なんとルールが6つもあります!

  1. ほとんどの名詞→ s をつける
  2. s/x/ch/sh/o で終わる名詞→ es をつける(例外もある)
  3. 〈子音字+y〉で終わる名詞→ y を i に変えて es をつける
  4. f/fe で終わる名詞→ f/fe を v に変えて es をつける(例外もある)
  5. 不規則に変化する名詞
  6. 単数形と複数形が同じ形の名詞

もしこの6つをいっぺんに教えたら、子どもによっては混乱するでしょう。

それを避けるために、ひとまずざっくりと「s をつける」「es をつける」というルールだけ教えるのです。

ただし、「es をつける」というルールを教えるときには、注意が必要です。

「s/x/ch/sh/oで終わる名詞の場合は…」とか、「〈子音字+y〉で終わる名詞の場合は…」といった細かいルールには触れません。

その代わり、「esをつける名詞もあるよ」と説明し、その例をいくつかざっくり挙げるのです。

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s ではなく es をつける
(例)
bus → buses
box → boxes
watch → watches

最後の y を i に変えて es をつける
(例)
city → cities
country → countries
~~~~~~~~

上で挙げた名詞は、複数形を作る練習問題でよく出てきます。まずはこういう頻出単語をいくつか覚えれば十分でしょう。

es に関する細かいルールを覚えるのは、勉強が苦手な子にとっては、かなり負荷が大きいです。情報を整理しきれず、結局、何も記憶に残らないかもしれません。

でも、「s ではなく es をつける場合があるよ」というシンプルでざっくりとした説明に留めておけば、子どもも es の存在を記憶しやすくなります。

情報を削ぎ落とせば、子どもの意識が「一番重要なポイント」に向きやすくなる、というわけです。


あれもこれも教えた結果、子どもたちが混乱してしまうくらいなら、思い切って基本に専念する。

そのほうが、子どもたちが文法を理解しやすくなりますよ。

すべてを網羅することが、必ずしも良いとはかぎりません。時には、完璧主義を手放すことも必要です。