子どもが文法問題などの答えを間違えた場合、あなたは、どう対処していますか? 何か言葉をかけることはありますか?
かつての私は、正しい解き方を解説するだけで精一杯。特に言葉をかけたりはしていませんでした。
でもそのうち、「ひとこと言葉をかけるって大事だなあ」と実感するようになりました。ちょっとした言葉がけが、次のような良いことをもたらしてくれるのです。
- 勉強しやすい環境を作れる
- 子どもが自信を持つ
- 大人が、より良い教え方を学べる
では、どんなふうに言葉をかけるといいのでしょう? いろいろあると思いますが、ここでは私が実践していることを3つご紹介します。
(1) 良かった点をほめてから、間違いを指摘する
どんな文法問題かにもよりますが、まず良かった点をほめて、そのあと間違いに触れるようにしています。たとえば、こんな感じです。
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・write のつづりを覚えていたのは良かったね。ただ、ひとつだけ惜しいところがある。どこか分かるかな?
・「be動詞を使う」ということに気づいたのは良かったね。ただ、「どの be動詞を使うべきか」それをよく考えてみよう。
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良かった点にわざわざ触れる理由は?
なぜ良かった点にわざわざ触れるのか? その理由は2つあります。
第一に、子どもからすれば、いきなりダメを出されると、へこんでしまうからです。
いきなりのダメ出しは、大人でもへこんだりしますよね。ましてや勉強が苦手な子どもなら、なおさらです。「やっぱりダメか」と、やる気が失せることもあるかもしれません。
でも、良かった点を認めてもらえれば自信がつくし、間違いの指摘にも耳を傾けやすくなるものです(悪い点ばかり指摘されると、耳をふさぎたくなりませんか?)
第二に、良かった点に触れると、子どもが「この点については、今の解き方で大丈夫なんだ」と確認することができます。
「たぶんこの答えで合ってると思うけど、どうかな…?」と思うこともあるはずですので、この確認作業は大事です。
「このやり方で大丈夫」と確認できると、確認できなかった場合と比べて、正しい解き方が定着しやすいように思います。
(2) 解答の根拠を尋ね、どんな返事であっても一旦受け止める
子どもたちには、できるかぎり「どうしてそう答えたの?」と聞くようにしています。解答の根拠を尋ねれば、「子どもがどこでつまずいているのか」が具体的に分かるからです。
子どもは、教える側が思ってもみないような根拠に基づいて解答することがあります。その根拠があまりにも意外で、私は不意打ちを食らった気分になることも……。子どもに尋ねてみないと分からないことって、たくさんあるんですよね。
ですので、時間が許すかぎり解答の根拠を尋ねるようにしています。
そして、その根拠がどんなに的外れであっても、すぐには否定せず、いったん受け止めます。「なるほど、そう考えたんだね」と。
なぜ受け止めるのか? それは、「子どもなりに考えて解いた」というプロセスを評価したいからです。そのプロセスを認めないと、子どもだって考えるのが嫌になりますよね。「何か答えたって、どうせ否定されるし」と。
逆に、「考えて解いた」というプロセスを認めてもらえれば、解く意欲も削がれないように思います(意欲がみなぎる、とまではいかなくとも……)。
(3) 「この問題、難しい!」という子どもの気持ちに寄り添う
基礎的な練習問題であっても、子どもによってはまったく歯が立たないこともあります。
「分からなくてカンで解いた」「難しかった」「いろいろ考えてたら、頭がごちゃごちゃしてきた」
子どもがそう言ったら、私はひとまず、その気持ちを共有するようにしています。たとえば、こんな感じです。
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・この問題は、ちょっとややこしかったよね
・頭の中がごちゃごちゃしちゃうよね。一緒に整理しながら考えよう
・カンで解いたのね。じゃ、文法をおさらいしながら一緒に考えてみよう
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子どもをホッとさせる
「難しい」という思いを共有すれば、おそらく子どもはホッとするでしょう。「自分の気持ちを分かってもらえた」と。
この「分かってもらえてホッとする」という感覚、大人でもありますよね。たとえばケガをして病院に行ったときです。「大変でしたね。痛かったでしょう?」と医者に言われたら、「この辛さ、分かってもらえた」と思って、それだけで少し痛みが和らぐような気がしませんか?
子どもそれと同じだと思います。「難しい」という思いを分かってもらえればホッとするでしょう。そしてホッとできれば、練習問題の解説にも耳を傾けやすくなるはずです。
逆に、「難しい」という思いに寄り添ってもらえず、「こんなの簡単なのに」とか「これ、基礎問題でしょ!」などと言われたら、どうでしょう? もし私だったらカチンと来てしまいます。解説を聞く意欲なんて、一瞬でこっぱみじんですね。
どうやって子どもの気持ちに寄り添うか?
そうならないように、教える側は子どもの気持ちに寄り添う必要があると思うのです。
「寄り添う」とか「気持ちを共有する」なんて難しい、と思われるかもしれません。
ですが、基本的に「オウム返し」をすればいいのです。つまり、子どもの言葉をそのまま繰り返したり、ニュアンスがずれない程度に言いかえたりするのです。
子どもに「頭がゴチャゴチャしてきた」と言われたら、「ゴチャゴチャしちゃうよね」と返す。
「難しかった」と言われたら、「ややこしかったよね」と返す。
そんなふうに言葉を返せば、子どもはホッと安心できるでしょう。そうなれば解説を聞く気にもなれるでしょうし、難しい課題にもチャレンジしやすくなるはずです。
たとえ答えを間違っても怒られることはない。「難しい!」という気持ちを分かってもらえる。そういう状況なら、失敗を恐れずにどんどんチャレンジできますよね。
以上、「答えを間違えた子どもに、どんな言葉をかけるべきか」についてお伝えしました。
言葉のかけ方はいろいろあると思いますが、ここでご紹介した方法もぜひお試しください。