今回は特別編です。いつもの「子どもたちへの教え方」ではなく、「英語表現の理解を深めるための記事」をお届けします。
この記事の大半は、中学校の学習範囲を超えています。ですので、この記事の内容を「子どもにも教えなきゃ!」と身構えなくても大丈夫です。気軽に読んでくださいね。
as~as の文を見て、次のようなイメージを持ったことはありませんか?
A is as tall as B.
「AもBも、すごく背が高いんだろうなぁ」
→tall は「背が高い」という意味なので、上のように思っても無理はありません。でも、じつはAもBも背が低い可能性があります。
A has as many books as B.
「AもBも(何十冊とか)たくさん本を持っているんだろう」
→many は「多い」という意味なので、上のように思いたくなりませんか。でも、じつはAもBも2~3冊しか持っていない可能性があります。
「どういうこと!?」
「tall や many と書いてあるのに……」
……と思いますよね。なんとも不思議な話です。
この記事では、この奥深い as~as の世界をマニアックに掘り下げてみたいと思います。
少し理屈っぽくて長い話になりますが、その分「なるほど!」と思える発見があるはずです。
as tall asのtallに「高いなぁ」の意味がないワケ
本題の as tall as に入る前に、準備として、tall という単語が持つ「2つの顔」を見てみましょう。
●tallが持つ「2つの顔」
(1) 「高いなぁ」という主観的な思いを表す
She is tall.
この tall には、「背が高いなぁ」という話者の思いが含まれています。一般的な基準に照らして「ずいぶん高いなぁ」と主観的に思っている、ということですね。
(2)「物差し」として機能する
She is 160 cm tall.(彼女は身長160cmだ)
この tall は「高さ」という客観的な物差し(評価項目)です。
「高さという物差しで測ると、160cmだ」
「高さという評価項目において、160cmある」
……と言うために tall が使われています。
この tall には、「高いなぁ」という主観的な思いは含まれていません。
●as tall as のtallはどっち?
上で見たように、tall には2つの顔がありました。
- 「高いなぁ」という主観的な思い
- 「高さ」という客観的な物差し
では as tall as の tall の場合、どちらの意味なのでしょう?
この tall は、「高さ」という客観的な物差し(評価項目)として機能します。
つまり、”A is as tall as B.”という文は、「高さという物差しで比べたら、ABのレベル(程度)は同じくらいだ」という意味になるのです。
●なぜ物差しになるのか?
基本的に “A is as~as B.”という文は、
- 「AとBのレベル(程度)が同じくらいだ」
- 「Bを基準にしたとき、Aもそのレベルに達している」
……と言うための文です。
ですから、”A is as tall as B.”の場合、「高さのレベルが同じくらい」と言うための文になるわけです。
ABの高さが同じくらいであれば、その高さは150cmだろうと190cmだろうと関係ありません。そして、その高さに対し「高いなぁ」という主観的な思いを乗せる必要もありません。
大事なのは、「高さが同じくらいかどうか」ということなのです。
つまりas tall as の文では、tall は「高さ」という客観的な物差しとして機能すれば十分、というわけです。
A is as tall as B.
文脈によっては「高いなぁ」という思いが含まれる場合があります。
(例) She is as tall as Ohtani Shohei!
彼女って背が高いんだよ。(190cm以上もある、あの)大谷翔平と同じくらいなんだ!
as many books asの場合は?
「as~asの文では客観的な物差しになる」語は、tall のほかにもあります。old, fast, many などです。
A is as old as B.
AはBと同じ年齢だ。
「年齢という物差しで比べると、AはBと同じレベルだ」という意味。AとBが同じ年齢であるなら、2人が3歳だろうと100歳だろうと、この文は使えます。
A runs as fast as B.
AはBと同じくらいの速さで走る。
「速さ」という物差しでABを比べています。AとBが同じ速さで走っているのであれば、その速度が時速5kmだろうと20kmだろうと、この文は使えます。
A has as many books as B.
AはBと同じ数の本を持っている。
「数」という物差しでABを比べています。本が5冊だろうと500冊だろうと、この文は使えます。「多いな!」といった主観的な思いは含まれていません。
文脈によっては、主観的な思いが含まれる場合もあります。
She runs as fast as Ohtani Shohei!
彼女って足が速いの。あの大谷翔平と同じくらい!
比較の基準となっているのが、足の速い大谷です。彼女はその大谷と同じくらいの速度で走ります。そのため「速い! すごい!」という話者の思いが含まれているのです。
as short asは「低いなぁ」という思いを含んでいる
上で見てきたように、as~as の文になると、tall / old / fast / many などは、客観的な物差し(評価項目)として機能します。「高いなぁ」「速いなぁ」といった主観的な思いは含まれていません。
ところが、tall / old / fast / many などの反対語の場合、事情が異なります。
反対語は short / young / slow(ly) / few ですね。as~as の文で使われると、これらの語には「低いなぁ/若いなぁ/ゆっくりだなぁ/少ないなぁ」といった思いが含まれるのです。
(例)
A is as short as B.
AはBと同じくらい背が低い。
→「低いなぁ」という思いが含まれている。
●なぜ思いが含まれるのか?
as tall as の tall には「高いなぁ」という意味はないのに、as short as の short には「低いなぁ」という思いが含まれています。
なぜ?
それは「tall と short」といった反対語のペアには、次のルールがあるからです。
as~as の文では、反対語のペアのうち、程度の高い(強い)側が物差しになる。
「tall と short」の場合、程度の高い側は tall、低い側は short です。
そのため「高さが同じくらい」と言うには、程度の高い側を使って as tall as と表現します。幼稚園児のように身長が低い場合でも、as tall as を使います。
tall が「高さ」という客観的な物差し(評価項目)になるのです。
これは日本語でも同じです。
「高い・低い」という反対語ペアのうち、程度の「高い(強い)側」の語を使って「高さが同じくらい」と言いますよね。「低さが同じくらい」とは、ふつう言いません。

程度の低い(弱い)側の語は、客観的な物差しとしては使われないのです。
ということは、もし「同じくらいの高さだ」と言いたいだけなら、as tall as と言えばすみます。
それなのに、あえて as short as を使う場合があります。それは、「低いなぁ」という思いを込めたいときです。
「高さが同じくらい」と言いたいだけではなく、「低いなぁ」という思いも込めたい。そんなときには、あえて as short as を使う、というわけです。
・as tall as 「同じくらいの高さ」→単に高さを比べている。
・as short as 「同じくらい低い」→低いことを強調している。
●ほかの反対語ペアもルールは同じ
「tall と short」以外の反対語ペアでも、同じことが言えます。
【old と young】
as old as 「同じ年齢」→単に年齢を比べている。
as young as 「同じくらい若い」→若いことを強調している。
【fast と slow(ly)】
as fast as 「同じくらいの速さ」→単に速度を比べている。
as slow(ly) as 「同じくらいゆっくり」→ゆっくりであることを強調している。
【many と few】
as many books as 「同じ数の本」→単に数を比べている。
as few books as 「同じくらい少ない数の本」→少ないことを強調している。
as interesting asの場合は?
A is as interesting as B.
上の英文の意味は、次の(1)(2)のうち、どちらでしょうか?
(1) ABの「面白さ」のレベルが同じくらい、と言っているだけ。ABともに「まったく面白くない・つまらない」ということもあり得る。

(2)「面白さ」のレベルが同じくらい、と言っているだけではなく、「面白いなぁ」という思いが含まれている。

正解は、「面白いなぁ」という思いが含まれている、です。
●なぜ思いが含まれるのか?
as tall as や as fast as に、話者の思いは含まれていなかったですよね。では、なぜ as interesting as には思いが含まれるのか?
結論から言うと、「物差しのタイプが異なるから」です。
●「高さ」や「速さ」は、どんなタイプの物差し?
「高さ」や「速さ」は、数値で表せる客観的な物差しです。ゼロを出発点として、プラスの方向へ伸びていきます。

高さの低い側から高い側まで、そして速さの遅い側から速い側まで、それぞれひとつの物差しでカバーできる、という特徴があります。
●「面白さ」は、どんなタイプの物差し?
一方「面白さ」は、数値を使った客観的な物差しではありません。
あくまで何かを主観的に評価するための物差しです(「まあまあ面白い」「非常に面白い」など)。
●「主観的な物差し」の使い方は日本語と英語で違う!
この主観的な物差しは、日本語と英語では少し異なっているように思います。私は、この違いを意識し始めてから、as~as をより理解しやすくなりました。
【日本語の場合】

日本語で「面白さ」と言う場合、そこには「面白くない」側から「面白い」側まで含まれている。そんな語感がありませんか?
「面白さ」というひとつの物差しが、ネガティブ側(面白くない)からポジティブ側(面白い)まで、まんべんなくカバーしている。そんな印象を受けます。
そのため、「AはBと同じくらいの面白さだ」と日本語で言った場合、「ABともに、あまり面白くない」という可能性も否定できません。
【英語の場合】
一方英語では、まず、「面白くもないし、つまらなくもない」という「どちらでもない」ゾーンがあります。
そこを出ると、ポジティブな方向に「面白さ」という物差しが伸びていきます。

「いくらか面白い」「結構面白い」「非常に面白い」など、面白さの程度が段階的に強くなっていきます。
この物差しには、「面白くない・つまらない」というネガティブな評価は含まれていません。どの段階においても、少なくともある程度は「面白い」のです。
一方、ネガティブな方向には、「面白くなさ」「つまらなさ」といった別の物差しが伸びていきます。

つまり、「面白さ」と「面白くなさ・つまらなさ」は、それぞれ別の物差し(評価項目)だ、というわけです。(ここが、日本語の感覚と少し異なっているように思います。)
●どっち方向の物差しを選ぶか?
ポジティブとネガティブ、どっち向きの物差しを選ぶか? as~as の文の場合、そのチョイスに話者の思いが表れています。
A is as interesting as B.
上の文では、話者は「Bは(少なくともある程度は)面白い。そのBと同じくらい、Aも面白い」と思っています。
面白いと思っているからこそ、ポジティブ方向の物差し(「面白さ」)を使って、AとBを比べているのです。
そして聞き手も、”A is as interesting as B.” と言われたら、「面白いんだな」と受け止めます。
もし全然面白くないのであれば、”A is as boring as B.” などと言うほうが自然ですからね。
皮肉を言う場合、面白くなくても as interesting as を使うことがあります。たとえば、数学が嫌いな子がこう言ったとします。
English is as interesting as math!
この場合、「英語って面白いよなあ。(あの大嫌いな)数学と同じくらい!」という意味の皮肉になります。
●happyやkindの場合も同じ
interesting や boring と同じように、下のような語も、何かをポジティブやネガティブに評価する言葉です。
これらの語にも、as~as の文で使われたときには、話者の思いが含まれています。
happy – sad
kind – mean
easy – difficult
(例)
A is as happy as B.
AはBと同じくらい幸せだ。
→「(少なくともある程度は)幸せだな」という思いが含まれています。
まとめ
as~asの「~」に、どんなタイプの語が入るか? そのタイプによって、as~as の意味合いが変わってきます。
tall, old, fast, many など
as~as の文では、「高さ/年齢/速さ/数」という客観的な物差し(評価項目)として機能します。
(例) as tall as 同じくらいの高さ
「高いなぁ」「速いなぁ」といった主観的な思いは含まれていません。
short, young, slow(ly), few など
as~as の文で使われた場合でも、「低いなぁ」「ゆっくりだなぁ」といった主観的な思いが含まれています。
(例) as short as 同じくらい低い
interesting, boring など
(何かをポジティブやネガティブに評価する語)
as~as の文で使われた場合でも、「面白いなぁ」「つまらないなぁ」といった主観的な思いが含まれています。
(例) as interesting as 同じくらい面白い
※以上は as~as(同等比較)についてのポイントです。比較級や最上級の場合は、事情が異なります。
参考にした本
この記事を書くにあたり、以下の本を参考にし、たくさんのヒントをいただきました。
- 「謎解きの英文法 形容詞」久野暲/高見健一(くろしお出版、2018年)
- 「Q&Aで探る学習英文法解説」濱口仁(開拓社、2023年)
- 「現代英文法講義」安藤貞雄(開拓社、2005年)
「謎解きの英文法 形容詞」は一般書ですが、言語学の用語を用いた骨太な解説が特徴です。
文法の要点をまとめた本ではなく、「そもそも、なぜそういうルールになっているのか」を解き明かしていく構成になっています。
「ルールの背景にある仕組みを知りたい」という方におすすめの、読み応えのある一冊です。
