現在進行形と現在形を使い分けられない子に、2つの違いをどのように教えればいいのか? この記事では、その方法を詳しくご紹介します。
現在進行形も現在形も奥が深くて難しいです。なかなか理解できないという中学生もいるでしょう。
そこで、「できるだけ平たく説明する方法」をお伝えします。勉強が苦手な子にも向いている教え方です。よかったら参考にしてみてください。
〈この記事のトピック〉
- 現在形と現在進行形を使い分けられない原因
- 「現在進行形を使うケース」の教え方
- 「現在形を使うケース」の教え方
- 間違えやすい動詞について説明する
- どこまで詳しく教えるべきか?
現在形と現在進行形を使い分けられない原因
現在形と現在進行形を使い分けられない原因は、「“~している”という日本語訳を機械的に覚えてしまった」ことにあると考えられます。
子どもたちは、「~している」という日本語を見ると、反射的に「進行形だ」と思ってしまいがちです。そうなると、現在形と現在進行形をうまく使い分けられません。
というのも、「~している」という日本語は、(英語の)現在形を意味する場合もあるからです。
(例)
彼は毎日早起きしている。
He gets up early every day.
私たちは日本に住んでいる。
We live in Japan.
このように、「~している」という日本語は、現在形を意味することもあります。そのため、「~している」=「現在進行形」というふうに覚えてしまうと、現在形と現在進行形を使い分けられないのです。
そこで現在進行形を教えるときには、現在形との本質的な違いをド~ンと前面に押し出すことが大事です。
「本質的な違い」というのは、「それぞれどんなときに使うのか」ということです。「現在進行形は“~している”、現在形は“~する”」といった訳し方の違いではなく、本質的な違いをハッキリと示すのです。
「現在進行形を使うケース」の教え方
「現在進行形を使うのはどんなときか」を説明するには、次のような方法があります。
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現在進行形には、「今ちょうど、~している最中(途中)だ」という意味が含まれているよ。
〈Ken is watching videos.〉という英文には、「ケンは今ちょうど動画を見ている最中(途中)だ」という意味があるんだ。今まさに、動画を見て楽しんでいる、ということだね。
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子どもは「(今)~している」という訳だけを覚えてしまいがちです。ですので、「今ちょうど~している最中(途中)だ」という本質的な意味を強調して教える、というのがポイントです。
「現在形を使うケース」の教え方
参考書や問題集には、「現在形は、現在の習慣や状態を表す」といった説明が載っていることがあります。
けれども、「現在の習慣や状態」が何を意味しているのか、子どもによっては理解しづらいかもしれません。特に「状態」という言葉の意味は難しいですよね。
そこで、次のように言い換えると、子どもも理解しやすくなると思います。
- 現在の習慣 → ふだん、よくすること
- 現在の状態 → コロコロ変わらないこと
具体的には、次のように教えてみてはどうでしょうか。
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現在形はどんなときに使うかというと、次の2つの場合があるよ。
1. 「ふだん、よくすること」について言うとき
「ふだん、よくすること」について言うときには、現在形を使おう。
ケンは動画を見る。
Ken watches videos.
上の英文では「ふだん、よく動画を見る」という話をしているよ。今日も見たし、明日も見るし、おそらく来週も見る。そんなふうに「ふだん、よくすること」について話すときには現在形を使うんだ。
「現在形」という名前がついているけれど、「今この瞬間」の話をしているわけではないよ。「ふだん、〇〇することがよくある」という習慣について話しているんだ。
2. 「コロコロ変わらないこと」について言うとき
たとえば「私はケンを知っている / 私はケンと知り合いだ」と言った場合、「今日も明日も来週もケンと知り合いだ」ということだよね。
「今日は知り合いだけど、明日は赤の他人になって、来週はまた知り合いになる」というふうに、コロコロ変わることはない。
こんなふうに、「コロコロ変わらないこと」について言うときにも、現在形を使おう。
私はケンを知っている。/ 私はケンと知り合いだ。
I know Ken.
「コロコロ変わらないこと」というのは、「知っている(know)」のほかにもあるよ。
(例)住んでいる(live)、持っている(have)、好きだ(like)、大好きだ(love)
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現在形については、上のように平たく説明すれば、勉強が苦手な子も理解しやすいのではないでしょうか。
間違えやすい動詞について説明する
現在形と現在進行形の使い分けにおいて、中学生が特に間違えやすい動詞が、know(知っている)、live(住んでいる)、have(持っている)です。
これらは(「動作」ではなく)「状態」を表す動詞で、基本的に進行形にはしません。ですが、子どもたちは「~している」という日本語につられて、進行形にしてしまいがちなのです。
私はケンを知っている。
× I am knowing Ken.
彼女は名古屋に住んでいる。
× She is living in Nagoya.
私は自転車を持っている。
× I am having a bike.
(※厳密に言うと、live と have は進行形にすることもありますが、それについては次のセクションでお伝えします。)
もし子どもが know、live、have を現在進行形にした場合、たとえば次のように説明してみてください。
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現在進行形には、「今ちょうど、~している途中だ」という意味が含まれていたね。
ということは、〈I am having a bike.〉は、「私は今ちょうど、自転車を持っている途中だ」という意味になってしまう。これでは、わけがわからないよね。
では、どうすればいいかというと、現在形を使って〈I have a bike.〉とするんだ。
現在形は、「コロコロ変わらないこと」を表すときに使えるよ。
たとえば「自転車を持っている」と言った場合、今日は持っているけど明日は持っていなくて、その次はまた持っている……ということはない。つまり、コロコロ変わらない。
そういう「コロコロ変わらないこと」を表すには、現在形を使おう。
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上のように、know、live、have が現在進行形になった文を、「今ちょうど~している途中だ」と訳してみせてください。そうすれば、「ヘンだ!」というのが子どもに伝わりやすいでしょう。
どこまで詳しく教えるべきか?
live や have は、場合によっては進行形にすることもあります。ですが、それについては、「ひとまず子どもには教えないでおく」というのをオススメします。
その理由をお伝えする前に、「live や have を進行形にできるケース」について簡単に解説しますね。
※すぐに理由を知りたい方は、「ひとまず教えないでおく」理由をご覧ください。
live や have を進行形にできるケース
■liveを「一時的に住んでいる」という意味で使う場合は、進行形にできます。
彼女は(一時的に)名古屋に住んでいる。
She is living in Nagoya.
上の文には、「今だけ一時的に名古屋に住んでいる。そのうち別の場所へ移る」という意味が含まれています。
■have が(「持っている」という「状態」ではなく)「動作」を表す場合は、進行形にできます。
彼は今、昼食を食べてるよ。
He is having lunch.
ホント楽しい!
I’m having a great time!
(直訳: 私は素晴らしい時間を過ごしている)
have が「食べる」「過ごす」など動作を表す場合は、進行形にできます。
「ひとまず教えないでおく」理由
「have や live を進行形にするケース」について、なぜ子どもに、ひとまず教えないでおくのか?
それは、現在形と現在進行形の基本的な使い分け方だけでも、子どもにとっては十分ややこしいからです。
基本的な使い分け方を理解していない状態で、例外的なケースまで教わると、ますますややこしくなるでしょう。
ですので、まずは基本的な使い分け方にフォーカスすることをオススメします。そして、のちのち教科書で例外的なケースが出てきたら、そのときに説明するのがいいと思います。
基本を身につけた状態で例外を教われば、それが「例外」であると認識しやすくなります。「例外として進行形にするときもあるんだな。でもふつうは、進行形にはしない」と、情報を整理できるでしょう。
教える側としては、最初からいろいろ説明してあげたくなりますよね。でも、そこはグッと我慢。あせらず、まずは基本にフォーカスしてみてください。
今回は、「現在形と現在進行形の違いをどう教えるか?」についてお伝えしました。
子どもは、「~している」という日本語に惑わされがちです。ぜひ、現在形と現在進行形の「本質的な違い」を教えてみてくださいね。
※関連記事「過去形と過去進行形の違い。中学生に教えるときのポイントは?」も、どうぞご覧ください。