勉強が苦手な子に「何か質問は?」と聞くのはオススメしない。その理由は?

勉強が苦手な子に「何か質問は?」と聞くのはオススメしない コラム

子どもに勉強を教えるとき、「何か質問はある?」と聞いたりしますよね。でも、勉強が苦手な子に教える場合、そうたずねるのはオススメしません。

それはなぜか? 結論から先に言うと、「たずねる意味があまりないから」です。

では、なぜ意味がないのか? 代わりに、どう聞けばいいのか? それをこの記事でご説明します。

具体的には、下のトピックについてお伝えしますね。

  • 「何か質問は?」と聞くのをオススメしない理由
  • 「何か質問は?」に代わるたずね方
  • たずねるときの工夫

「何か質問は?」と聞くのをオススメしない理由

「何か質問はある?」とたずねるのをオススメしないのは、「そもそも、たずねる意味があまりないから」です。

「何か質問はある?」とたずねる目的は、「子どもの理解度を把握するため」「子どもの疑問点をなくすため」です。

けれども、勉強が苦手な子からは大抵、「いいえ」という答えが返ってきます。そうなると理解度を把握することはできませんよね。

そのため、「何か質問は?」とたずねることに、あまり意味はないのです。

なぜ、「いいえ」と答えるのか?

では、勉強が苦手な子は「何か質問は?」と聞かれたとき、なぜ「いいえ」と答えるのか? その理由は4つ考えられます。

(1) 「自分は理解していない」ということを理解していない

人に何か質問するためには、「自分は〇〇を理解していない」ということを自覚する必要があります。そのため、「〇〇を理解していない」という自覚がない子は、何も質問できません。

大人にとってもそうですけど、「自分は〇〇を理解していない」と自覚することは、結構難しいものです。

(2) 「どこがわからないか」をうまく説明できない

「自分は理解していない」という自覚があっても、「どこがどのようにわからないのか」をうまく言語化できない子がいます。

「え~と……」と考えてはみるものの、結局、うまく言えないために質問することをあきらめ、「なんでもないです」と言ったりします。

(3) 「わからない」と認めたらプライドが傷ついてしまう

「理解していない」ということを誰かに知られたら、プライドが傷ついてしまう。そういうタイプの子は、質問することに抵抗があります。

(4) 「質問すると笑われそう・怒られそう」と思っている

「こんなことを聞いたら、笑われたり怒られたりするのでは?」と不安に思っていると、なかなか質問できません。

「何か質問は?」に代わるたずね方

ここまで見てきたように、「何か質問はある?」と聞いても、勉強が苦手な子の疑問点をなくすことは、あまりできません。

そこで、「何か質問は?」に代わるたずね方を5つご紹介します。

(1) どこか、モヤモヤするところはある?

「わからない」と認めたらプライドが傷つく子も、「モヤモヤする」という表現なら、それほど抵抗はないと思います。

私が以前教えていた子の中に、プライドが高めの子がいました。ある日、その子に「わからないところはある?」と聞くと、「いや、まあ、モヤモヤするっていうか……」という答えが返ってきたのです。

私はそれを聞いてハッとさせられました。「モヤモヤという表現であれば、この子のプライドも傷つかずにすむんだ」と。

子どものプライドを傷つけないようにするには、「モヤモヤ」のような、オブラートに包んだ言葉を使うのも大事だと思います。

(2) 「あともう一歩」ってところはある?

プライドが高めの子には、こうたずねるのも手です。

「『大体わかったけど、あともう一歩かな』っていう箇所はある?」

このようにたずねれば、プライドを傷つけることなく、「子どもがつまずいている箇所」を見つけ出すことができます。

(3) 念のためにもう一度確認しておきたいところはある?

このたずね方も、プライドが高めの子に向いています。「ほとんど理解できたけど、念のために確認しておこう」という気持ちになれば、子どもも質問しやすくなるでしょう。

(4) 説明がいまいちハッキリしなかったところって、ある?

「どこがどのようにわからないのか」を言語化するのが苦手な子には、「説明がハッキリしなかったところ」をたずねるのも手です。

「説明がハッキリしない」という表現には、「説明の仕方に問題がある」という含みがあります。ですので、子どもが「わからない点について、自分できちんと伝えないとならない」というプレッシャーを感じないですむでしょう。

子どもは、「このへんがハッキリしなかった」と言って、教科書やプリントを指差すだけですみます。

(5) 問題を解いてみてどうだった?

「今取り組んだ問題は、どうだった?」「今日は〇〇を勉強したけど、どうだった?」と感想をたずねるのもオススメです。

「難しかった」という返事があった場合

もし「難しかった」という返事があれば、さらに「どの辺りが特に難しかった?」とたずねます。

理解していない点についてうまく質問できない子でも、「この辺りが難しかった」と伝えるだけであれば、比較的簡単にできるでしょう。

子どもが「難しかった」と言った場合、その箇所を理解していない可能性が高いので、もう一度ポイントをおさらいしてみてください。

「まあまあできた」という返事があった場合

時には、「まあまあできた」「最初は難しかったけど、大丈夫」という返事もあります。

そのときは、子どもが本当に理解しているか確かめるため、クイズを出してみてください。「今日のおさらいをしよう。be動詞の過去形はいくつあった?」などと質問するのです。

「まあまあできた」という子であっても、「理解しているつもり」になっている場合があります。ですので、確認のためにクイズを出せば、子どもの理解度を把握できます。


さて、ここまで、「何か質問は?」に代わるたずね方を5つ見てきました。

  • どこか、モヤモヤするところはある?
  • 「あともう一歩」ってところはある?
  • 念のためにもう一度確認しておきたいところはある?
  • 説明がいまいちハッキリしなかったところって、ある?
  • 問題を解いてみてどうだった?

たずねるときの工夫

上のようにたずねるとき、ちょっとした工夫をすると、「子どもの理解度を把握する」という目的を果たしやすくなります。

その工夫のアイデアを3つご紹介しますね。

ゆっくり話す

子どもたちは、質問されても即答できるわけではありません。少し考える時間が必要です。

そのとき、子どもがあせらないように、大人はゆっくり話してみてください。ゆっくり話すことで、「あせらないで大丈夫」という雰囲気を作るのです。そして、子どもの返事をじっくり待ちます。

もし、「説明がいまいちハッキリしなかったところって、ある?」と、早口でガーッと言われたら、子どもはきっとあせるでしょう。「早く答えないとマズい」って思ってしまいますからね。

事務的にたずねない

「何か質問は?」に代わるたずね方をしたとしても、事務的にたずねてしまっては意味がありません。「いいえ」という答えが返ってくる可能性が高いからです。

子どもは、大人の口調に敏感です。大人が事務的にたずねると、「この質問は形だけだ」と子どもは感じ取ります。そうなると、子どもも形式的に「いいえ」と答えてしまうでしょう。

ですので、少し感情を込めてたずねるのがオススメです。たとえば、こんな感じです。

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「もう一度確認しておきたいな」というところは、何かあるかな? 「う~ん、ちょっとわかりづらかったなぁ……」とか、「なんかややこしい!」とか、そういうところはあった?
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わざとらしくならない程度に感情を込めてみてください。演技っぽくなると、子どもに見抜かれてしまいますので。

大事なのは、「形式的な質問をしているわけではない」というメッセージが伝わることです。

絶対に怒らない・笑わない

子どもからどんな答えが返ってきても、怒ったり笑ったりしないようにします。

「そんなこともわからないの!?」「この前も説明したでしょ」などと言うと、子どものプライドが傷ついてしまいます。それに、「わからないところはあるか」と聞いておきながら、「そんなこともわからないの」と言うのは理不尽ですよね。

子どもが「ここがわからない」と言ったら、「確かにややこしいよね」と受け止めることが大事だ、と私は思います。たとえどんなに基礎的な問題であっても、です。

いったん受け止めれば、子どもは「理解してもらえた」とホッとできます。そして、その後も「ここがわからない」と質問しやすくなるでしょう。

※関連記事「子どもが答えを間違えたとき、大人はどんな言葉をかけるべき?」も、ぜひご覧ください。


今回は、「何か質問は?」に代わるたずね方をご紹介しました。どれか使えそうなアイデアがあれば、実践してみてくださいね。少し工夫するだけで、子どもの理解度を把握しやすくなると思います。