勉強を教えるとき、真っ先に子どもとの信頼関係を築くべき理由

勉強を教えるとき、真っ先に子どもとの信頼関係を築くべき理由 コラム

「子どもの勉強を見るとき、上手に教えたい」「家庭教師・塾講師を始めるから、勉強をうまく教えるコツを知りたい」

そんな方にまず試してほしいのが、こちらです。

“子どもとの信頼関係を築く”

そんなことを言われても、

「特に目新しいアドバイスじゃないでしょ」「信頼関係は無いよりあったほうがいいに決まってるでしょ」

……と思われるかもしれません。

でも、あえてここで信頼関係を取り上げるのには、ワケがあります。それは、「信頼関係があってこそ、子どもは勉強を教わる気になる」と私は思うからです。

私は中学生向けの無料塾で英語を教えているのですが、「早い段階で子どもと信頼関係を築けるかどうか」が、授業の質を大きく左右するようにも思います。

なぜ、それほど信頼関係が大事なのか? そして、信頼関係を築くにはどうすればよいのか? それをご説明していきますね。

なぜ信頼関係が大事なのか?

当たり前のことですが、何かを教わるなら、信頼できる相手から教わりたいものです。

大人でもそうですよね。嫌な上司の話には耳を傾ける気になれません。また、すぐカミナリを落とすような上司にも、「何かアドバイスしてもらおう」という気にはなれません。

子どもたちも同じです。

「怒られるんじゃないだろうか」とビクビクしたり、「この人、嫌だなぁ」と思ったりしたら、その人に勉強を教わる気にはなれないでしょう。

逆に、「この人と一緒にいると居心地がいい」「この人となら安心して勉強できる」と感じられれば、教える側の話に耳を傾けやすくなるはずです。

このように、勉強を教わるには、「教える側を信頼する」「教える側に対して安心感を持つ」ことが重要です。

そのためには、教える側の大人が工夫して信頼関係を築かないとなりません。

「信頼関係を築く」というと、なんだか小難しく聞こえますよね。でも、ざっくり言い換えると、要は「子どもが安心して教わることができる。そんな雰囲気を作ろう」ということです。

信頼関係を築くための工夫

では、どうやって信頼関係を築くのか? 私が日頃気をつけていることを5つご紹介します。

  1. 気分のムラを作らない
  2. 「子どもの関心事」に関心を持つ
  3. ひとまず共感する
  4. バカにしない(笑わない)
  5. 子どもの話を遮らない

1 気分のムラを作らない

気分にムラのある大人を前にすると、子どもはご機嫌うかがいをしてしまいます。

何がきっかけで怒られるか分からないので、常に大人の顔色をうかがっていないとならないのです。

そんな状況では、「勉強すること」より「大人の気分を害さないようにすること」のほうが優先されてしまいます。子どもたちは緊張を強いられますし、安心して教わることはできないでしょう。

ですので、教える側は気分のムラを作らないのが大事です。常に満面の笑みを浮かべる必要はありませんが、子どもに穏やかに接するのは大事です。

2 「子どもの関心事」に関心を持つ

たとえばあなたが今、ピザ屋さん巡りにハマっているとします。そのことを同僚に話したき、「へえ、ピザって店によってどんなところが違うの?」と質問されたりしたら、ちょっと嬉しくなりませんか?

嬉しくなる理由は、「あなたの関心事」(ピザ屋さん巡り)だけではなく、「あなた自身」にも興味を持ってもらえたように感じるから、ではないでしょうか。

それはきっと、子どもも同じです。

自分に興味を持ってもらえると嬉しいですし、「この人(教える側の大人)は、自分のことをちゃんと見ててくれる」という安心感も生まれるでしょう。

というわけで、大人が「子どもの関心事」に関心を持つというのは、とても意義深いことです。

これは、「子どもの関心事や趣味に、大人も夢中になるべきだ」という意味ではありません。「何かにハマっているその子自身に関心を寄せる」というのがポイントです。

では、どうやって関心を示すか?

一番簡単なのは、何か質問をすることです。

子どもが K-POP の話をしたら、「どんなグループが好きなの?」と聞く。

ゲームの話になったら、「どんなゲームをよくするの?」

部活の話になったら、「練習って、毎日あるの?」

何の話なのかチンプンカンプンなら、「それって何?」

とにかく何か質問すると、「関心を寄せている」というメッセージを伝えることができるでしょう。

ただし、根掘り葉掘り尋ねるのは避けたほうがいいです。子どもの中には、あまり自分のことを話したがらない子もいますから。

あくまでサラッと、コミュニケーションの潤滑油程度に質問するのがオススメです。

3 ひとまず共感する

子どもが何か言ったときは、ひとまずそれを受け止めます。説教したり自分の意見を言ったりしたくなっても、まずは子どもの気持ちを受け止めて、それを共有するのです。

そうすれば、子どもは「気持ちを分かってもらえた」と安心するでしょう。

大人だって自分の話をするときには、「相手に聞いてもらいたい」という気持ちがありますよね。

もし相手が「なるほど、そんなことがあったんだね」と受け止めることなく、いきなり持論を展開し始めたらどうでしょう? ちょっとがっかりしませんか?

子どもが何か言ったときにも、まずは受け止める(共感する)というのが大事です。

どうやって受け止めるのか?

たとえば、こんな感じです。

~~~~~~~~
子ども: 5時間目の授業、居眠りした。
大人:(「起きてなさい」と思ったとしても)そうか~。ご飯のあとは確かに眠いよね。

子ども: 〇〇くんのせいで、私まで怒られた。
大人:(「〇〇くんではなく、本人のせいだと思えても)それは大変だったね。

子ども: XXがすごく盛り上がって楽しかった。
大人:(楽しかったことの内容がよく分からなくても)そう、盛り上がったんだね。
~~~~~~~~

もし何か意見を言うなら、一旦受け止めてから言うのがオススメです。受け止めてもらえたあとだと、子どもも相手の話に耳を傾けやすくなるからです。

いきなり説教されたり、自分の思いを否定されたりしたら、相手の話を聞く気にはなりにくいですよね。

4 バカにしない(笑わない)

子どもが問題を解き間違えたり、何か的外れなことを言ったりしても、決してバカにしないようにします。

これは私が特に気をつけていることです。バカにしたり笑ったりすると、子どものプライドを傷つけてしまいますから。

たとえ「このくらい解いてほしい」「全然理解していないな」などと思ったとしても、それは絶対に言いません。

もし言ってしまったら、子どもはプライドが傷つくし、居心地も悪くなるでしょう。

では、子どもが問題を解き間違えたときに、大人はどう対処するといいか? その方法については、下の記事でご紹介しています。ぜひご覧ください。

子どもが答えを間違えたとき、大人はどんな言葉をかけるべき?

5 子どもの話を遮らない

誰でもそうだと思いますけど、自分の話をじっくり聞いてくれる相手に対しては、好感を持てますよね。

自分を大切にしてもらっている感じがしますし、ちゃんと聞いてもらえている安心感も生まれます。

逆に、途中で話を遮られると、「まだ言いたいことがあったのに……」なんて思ったりするものです。

ですので、子どもが話しているときも、最後までじっくり聞くのがオススメです。つい話をチャチャッとまとめたくなったり、意見を言いたくなったりしますけど、そこは我慢です。

子どもたちの中には、話すのがあまり上手ではない子もいます。言いたいことをうまく言語化できない子の場合、正直、何の話をしているのかよく伝わってこないこともあります。

それでも私は、一旦子どもが話し終わるまで待つようにしています。そのあと、「今のは、つまり、〇〇ってことかな?」などと尋ねるようにしています。

「とりあえず最後まで聞く」というのは時間がかかります。もどかしい気分になることもありますけど、やってみる価値は大いにあります。


以上、子どもが安心して教わることができるようにするための、5つの方法をご紹介しました。

こうやって子どもとの信頼関係を築ければ、大人は勉強を教えやすくなりますし、子どもは安心して教わることができるでしょう。

まずは安心感という土台を築く。それが、勉強を教えるときの第一歩です。ぜひ、試してみてくださいね。