「疑問詞の教え方シリーズ」(全6回)の第5回へ、ようこそ!
このシリーズでは「英語が苦手な子に、疑問詞をわかりやすく教えたい!」という方のために、教え方のコツをご紹介しています。
この記事は「疑問詞の教え方シリーズ」の第5回です。先に第1回をご覧になれば、今回の内容がよりわかりやすくなるかと思います。
第1回 子どもがつまずく原因と対策
第4回 Where do ~?とWhere is ~?などの使い分け
第5回 What time ~?やHow many ~?など(この記事)
第6回 疑問詞を使った疑問文への答え方
今回のトピックは〈What time ~?〉や〈How many ~?〉などです。〈What+名詞〉や〈How+形容詞〉で始まる文ですね。
英語が苦手な子は、〈What do you like subject?〉など文法的に誤った文を書くことがよくあります。なぜでしょう?
この記事では、その原因を踏まえながら〈What+名詞〉や〈How+形容詞〉の教え方をくわしくご紹介します。
よくある間違いとその原因
英語が苦手な子は、次のような誤った英文を書くことがよくあります。
あなたは何の(どんな)科目が好きですか。
【誤答】What do you like subject?
なぜ、このような英文を書いてしまうのでしょう? その大きな原因は2つ考えられます。
【原因1】「とりあえず疑問詞だけ置く」というクセがついている
疑問詞の単元では、「文頭に疑問詞を置く」というルールが繰り返し強調されます。すると、文全体の意味がどうであれ、とりあえず文頭に疑問詞だけをポンッと置きがちになるのです。
たとえば〈Where does he live?〉という文を作る場合、とりあえず Where だけ先に書いておく。そのあと、ほかの語順を考えるというわけです。
そういうやり方に慣れると、〈What+名詞〉を使う文であっても、とりあえず What だけをポンッと文頭に置いてしまいます。

そして、疑問詞だけを置いたあと、残りの語順を考えるのです。

文全体の意味がどうであれ、とりあえず疑問詞だけを文頭に置いてしまう。そういう手順では、誤った文を書いても不思議ではありません。
【原因2】カタマリを意識していない
たとえば what(どんな)と subject(科目)が組み合わさると、〈what subject〉というカタマリができますよね。
ところが子どもによっては、これを1つのカタマリとして見ることがなかなかできません。英文を見たとき、単語1つ1つをバラバラに認識してしまうのです。
「2つ以上の単語が組み合わさって、1つのカタマリを作っている」ということを理解していない、というわけです。
もしカタマリを意識できれば、英文は下のように見えます。

一方、カタマリを意識しないと、英文は下のように見えるでしょう。

単語1つ1つをバラバラに認識してしまうと、自分で文を作るときにも「カタマリを作る」という発想が出てきません。
その結果、〈What do you like subject?〉というような文を書いてしまう、というわけです。
では、正しい英文を書けるようにするには、〈What+名詞〉や〈How+形容詞〉をどのように教えればいいのか? その方法を見ていきましょう。
〈What+名詞〉の教え方
最初に「何時」(What time)、続いて「何の〇〇/どんな〇〇」(What subject など)を取り上げます。
「何時」
まずは〈What time〉を使った例文を挙げましょう。
〈教え方の例〉
「何時に起きますか」「今何時ですか」など、「何時」とたずねるには〈What time〉というカタマリを使うよ。
あなたは何時に起きますか。
What time do you get up?

今何時ですか。
What time is it now?
今の時間をたずねるときは、主語を it にする。この it は日本語には訳さないよ。
続いて「〈What time〉は1つのカタマリとして使う。バラバラに分解できない」ということを説明します。
子どもが理解しやすいように、「何時」という日本語の表現と比較しながら説明しましょう。
〈教え方の例〉
「何時」という表現を使うときには、大事なポイントがあるよ。まずは日本語の文を見てみよう。
あなたは何時に起きますか。
「何時」という言葉に注目しよう。「何(なに)」と「時(とき)」という2つの文字がセットになって、「何時」という1つのカタマリを作っているね。

「何」と「時」はバラバラに存在しているわけではないよね。

バラバラに分解したら、文の意味がわからなくなってしまう。「何時」は1つのカタマリってことだね。
これと同じで、〈What time〉も1つのカタマリなんだ。だから、バラバラに分解してはダメだよ。

つい what だけ文の頭にポンッと置きたくなるけど、それはできない。必ず〈What time〉というカタマリを置こう。
説明のあとは、下のような並べかえ問題に取り組んでみてください。
日本語と同じ意味になるように、( )内の語句を並べかえなさい。
1. あなたは何時に寝ますか。
( you / time / go / do / to bed / what )?
2. あなたは何時に朝食を食べますか。
( eat / what / you / breakfast / do / time )?
3. 今何時ですか。
( now / is / time / what / it )?
【解答】
1. What time do you go to bed?
2. What time do you eat breakfast?
3. What time is it now?
「何の〇〇/どんな〇〇」
続いて、〈What subject〉など「何の〇〇/どんな〇〇」という表現を教えましょう。
〈教え方の例〉
〈What time〉の time を別の言葉に置き換えると、いろんなことを質問できるよ。
●〈What sport〉
何のスポーツ・どんなスポーツ
あなたは何のスポーツ(どんなスポーツ)が好きですか。
What sport do you like?
what には「何」のほかに「どんな」という意味もあるよ。だから、〈What sport〉は「どんなスポーツ」と訳すこともできる。
●〈What subject〉
何の科目・どんな科目
あなたは何の科目(どんな科目)が好きですか。
What subject do you like?
このように、〈What 〇〇〉というカタマリで「何の〇〇・どんな〇〇」という意味になるんだ。
〈What 〇〇〉というカタマリを紹介したあと、「カタマリは分解できない」という注意点を付け加えましょう。
〈教え方の例〉
〈What time〉と同じように、〈What sport〉や〈What subject〉といったカタマリも、バラバラに分解してはダメだよ。必ずカタマリで使おう。

「何の〇〇・どんな〇〇」という意味の日本語を英語になおすには、〈What 〇〇〉というカタマリを作ること。これが大事だよ。
参考までに、教科書や問題集によく出てくる〈What 〇〇〉のパターンは、こちらです。↓
What sport
What subject
What color
What food
What animal
教科書や問題集によっては、〈What+名詞〉の名詞が複数形になっている場合があります。
(例) あなたは何の(どんな)科目が好きですか。
What subjects do you like?
厳密には、複数と単数では下のようにニュアンスが異なります。ですが中学1年の段階では、細かなニュアンスの違いまで覚える必要はないと思います。
もし2つの違いについて子どもに聞かれたら、説明してあげてください。
What subjects do you like?
→「好きな科目がいくつかあるだろうな」と思ってたずねる場合は、複数形を使う。
What subject do you like?
→「特に好きな科目を1つ教えてほしい」という気持ちでたずねる場合は、単数形を使う。
「何の〇〇・どんな〇〇」の説明が終わったら、下のような問題に取り組んでみてください。
日本語と同じ意味になるように、( )内の語句を並べかえなさい。
1. あなたは何色(どんな色)が好きですか。
( you / what / like / color / do )?
2. あなたは何の(どんな)動物が好きですか。
( do / animal / you / what / like )?
【解答】
1. What color do you like?
2. What animal do you like?
〈How+形容詞〉の教え方
〈How much〉〈How old〉などを先に教え、そのあと〈How many 〇〇〉に入りましょう。
〈How much〉〈How old〉など
「〈What 〇〇〉というカタマリのほかに、〈How 〇〇〉というカタマリもあるよ」と前置きしてから、〈How much〉などのカタマリ(下記)を教えてください。
●〈How much〉
「いくら」(値段をたずねる)
これはいくらですか。
How much is this?
●〈How old〉
「何歳」(年齢をたずねる)
あなたの弟は何歳ですか。
How old is your brother?
●〈How long〉
「どのくらいの長さ」(モノや時間の長さをたずねる)
この川はどのくらいの長さですか。
How long is this river?
●〈How tall〉
「どのくらいの高さ」(身長・木・建物などの高さをたずねる)
あなたの背はどのくらいの高さですか。
How tall are you?
上の4つは問題集などによく出てきます。全部覚えるのが難しそうなら、まずは〈How much〉と〈How old〉だけ教えてみてはいかがでしょうか。
この2つは小学校の授業でもよく出てくる表現ですので、子どもたちもついてきやすいと思います。
〈How 〇〇〉の表現を教えたあと、下のような注意点を付け加えてください。
〈教え方の例〉
〈What time〉や〈What subject〉など、〈What 〇〇〉というカタマリは分解できなかったよね。
それと同じように、〈How 〇〇〉もバラバラに分解しないこと。必ずカタマリで使おう。
(例) この川はどのくらいの長さですか。

説明のあとは練習問題に取り組んでみてください。
日本語と同じ意味になるように、( )内の語句を並べかえなさい。ただし、不要な語が1つ含まれています。
1. 彼らは何歳ですか。
( old / are / how / much / they )?
2. あの木はどのくらいの高さですか。
( that tree / long / tall / is / how )?
【解答】
1. How old are they?
2. How tall is that tree?
〈How many 〇〇〉
続いて〈How many 〇〇〉について説明しましょう。
〈教え方の例〉
「本を何冊持っていますか」など、「いくつ?」と数をたずねるには、〈How many 〇〇〉というカタマリを使おう。
(例) あなたは本を何冊持っていますか。
本の数をたずねたい場合、〈How many 〇〇〉の〇〇に books を入れる。すると〈How many books〉というカタマリができる。これで「何冊の本」という意味になるよ。
How many books do you have?
(例) あなたは毎日、動画を何本見ますか。
動画の数をたずねたいので、〈How many 〇〇〉の〇〇に videos(動画)を入れる。
How many videos do you watch every day?
〈How many 〇〇〉の使い方を説明したあと、下の注意点を付け加えてください。
〈教え方の例〉
〈How many 〇〇〉を使うときには、注意点が2つあるよ。
(1)〈How many 〇〇〉の〇〇は、複数形にする。
〇 How many books
× How many book
(2)〈How many 〇〇〉をバラバラに分解しない。カタマリで使う。

日本語と同じ意味になるように、( )内の語句を並べかえなさい。
1. あなたはネコを何匹飼っていますか。(※飼うhave)
( many / do / have / how / you / cats )?
2. あなたは毎年、本を何冊読みますか。(※毎年 every year)
( books / many / read / do / how / you ) every year?
【解答】
1. How many cats do you have?
ネコの数をたずねたいので、〈How many 〇〇〉の〇〇に cats を入れる。
2. How many books do you read every year?
本の数をたずねたいので、〈How many 〇〇〉の〇〇に books を入れる。
頭を整理するための練習問題
疑問詞に慣れるまでは、下の(a)と(b)の違いは、ややこしいものです。
(a) 〈What 〇〇〉や〈How 〇〇〉を使う文
(b) what や how を単独で使う文(How is the weather? など)
(a)と(b)が頭の中でゴチャ混ぜになると、〈What do you like subject?〉のような文を作ってしまいがちです。
そこで下のような問題に取り組んでみてください。頭の中を整理するための問題です。
日本語と同じ意味になるように、( )内の語句を並べかえなさい。
1. 東京の天気はどうですか。
( is / the weather / how ) in Tokyo?
2. あなたの弟は何歳ですか。
( old / your brother / how / is )?
3. あなたはどのようにして学校へ来ますか。
( to school / you / how / come / do )?
4. この本はいくらですか。
( how / is / much / this book )?
5. あなたは朝食に何を食べますか。
( you / what / eat / do ) for breakfast?
6. あなたはどんな(何の)科目が好きですか。
( do / what / like / you / subject )?
7. あなたはどんな(何の)スポーツが好きですか。
( sport / you / what / do / like )?
【解答】
1. How is the weather in Tokyo?
2. How old is your brother?
3. How do you come to school?
4. How much is this book?
5. What do you eat for breakfast?
6. What subject do you like?
7. What sport do you like?
まとめ
英語が苦手な子は英文を見たとき、単語1つ1つをバラバラに認識しがちです。そうなると、英文を書くときにも「カタマリを作る」という発想が出てきません。
そこで、〈What+名詞〉や〈How+形容詞〉を教えるときには、これらが“カタマリ”であることを強調することが大事です。
その際、下のように視覚にアピールしながら説明すると、子どもも理解しやすくなるでしょう。

ぜひ実践してみてくださいね。
次回は、いよいよシリーズ最終回。「疑問詞を使った疑問文への答え方」を取り上げます。下の記事でまたお会いしましょう。