現在完了進行形について、次のように考えたことはありませんか?
●現在完了進行形は「絶え間なくずっと~し続けている」という意味だ。ということは、〈I have been playing soccer for ten years.〉という文はおかしい。10年間も、1秒も休まず絶え間なくサッカーをし続けるなんて、あり得ないから。
(→じつはこれ、誤解なんです)
●現在完了進行形と現在完了形(継続用法)の違いは何?
●「状態」の継続には現在完了形(継続用法)、「動作」の継続には現在完了進行形を使う、と習った。でも study や work といった「動作」の継続を、現在完了形(継続用法)で表している問題集がある。一体どういうこと?
現在完了進行形は、ややこしいですよね。お子さんの勉強を見ている保護者や家庭教師の中には、「子どもに教える前に復習しておきたい」という方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、復習の意味も込めて、現在完了進行形について解説します。また、記事の後半では「中学生にはどう教えるか?」についてお伝えします。
現在完了進行形にまつわるモヤモヤをスッキリさせましょう!
現在完了進行形は「ぶっ続けでやっている」という意味?
現在完了進行形は「ずっと~し続けている」と訳すのが定番ですよね。
ですが、必ずしも「休むことなく、今この瞬間もやり続けている」という意味になるとは限りません。
たしかに「ぶっ続けで今この瞬間もやっている」という場合もありますが、「断続的に取り組んでいる」という場合もあるのです。
(例1)
ケンは今朝からずっとピアノを弾いている。
Ken has been playing the piano since this morning.
上の文は、たとえば次の2通りに解釈できます。
(a) 休憩することもなく、今朝から(文字どおり)ぶっ続けで何時間もピアノを弾いている。今この瞬間も鍵盤をたたいている。
(b) 食事やトイレ休憩などを挟みながら、何時間もピアノを弾いている。(ちょっとしたブレイク以外は、ずっとピアノを弾いている。)
(a)と(b)、どちらが正しいかというと、どちらの解釈もアリなんです。文脈によって判断します。
日本語で「ケンは今朝からずっとピアノを弾いている」と言った場合と同じです。日本語でも、(a)と(b)、どちらにも解釈できますよね。
(例2)
ケンは10年ピアノを弾いている。
Ken has been playing the piano for ten years.
上の文は「10年間、不眠不休で弾き続けている」という意味ではありません。
「10年前にピアノを弾き始め、弾くという習慣が現在も続いている」という意味です。
つまり「ピアノ歴10年」ということですね。「ぶっ続けで絶え間なく弾いている」という意味ではないのです。また「今この瞬間も弾いている」とは限りません。
この点について、「英文法のエッセンス」(大修館書店)は次のように解説しています。
〈引用〉
「ずっと~し続けている」といっても、必ずしもいま目の前でその動作が続いているとは限りません。(中略)
He has been studying English for twenty years.は、文字通りこの20年間ずっと机から離れずに英語を勉強しているということではありません。そうではなく、この20年間継続して英語を勉強していることを言っていて、「この20年間ずっと学んできている」という動作の継続を強調しています。
↑出典 「英文法のエッセンス」(江藤裕之 著、大修館書店)
現在完了進行形だからといって、「絶え間なく動作をし続けている」「今この瞬間もしている」とは限らない、ということですね。(もちろん、そういう場合もありますが。)
現在完了進行形と現在完了形(継続)の違い
現在完了進行形の意味がわかったところで、次は現在完了形(継続用法)との違いを見ていきましょう。
まず基本的な違いは、こちらです。
〈基本的な違い〉
●現在完了進行形→「動作をし続けている」と言う場合に使う
ケンは今朝からずっと動画を見ている。
Ken has been watching videos since this morning.
●現在完了形(継続用法)→「ある状態が続いている」と言う場合に使う
私は2日間ずっと具合が悪い。
I have been sick for two days.
「状態」というのは、ザックリ言い換えると「動きがないこと」です。
たとえば上の been sick(具合が悪い)には、具体的な体の動きがありません。また、know(知っている)や have(持っている)などにも動きがありませんよね。
このような「状態」が続いている、と言うときには現在完了形(継続用法)を使います。
一方、watch(見る)や swim(泳ぐ)といった「動作」が続いている場合は、基本的に現在完了進行形にする必要があります。
「基本的に」と書いたのは、例外もあるからです。つまり、動作の継続を表すときに(現在完了進行形だけではなく)現在完了形(継続用法)も使えるケースがあるのです。
では、それについて次のセクションで見ていきましょう。
動作の継続は現在完了形でも表せる!?
動詞によっては表せる
「動作がずっと続いている」と言う場合は、基本的に現在完了進行形を使います。
ですが、問題集や教科書で下のような文を見たことはありませんか?
(例) 伊藤さんはここで10年働いている。
Ms. Ito has worked here for ten years.
work は動作を表しています。それなのに、上の文では(現在完了進行形ではなく)現在完了形を使って「継続」を表現しています。
「なんで!?」と思いますよね。
じつは、動作の種類によっては、現在完了形を使って継続を表すこともできるのです。つまり現在完了進行形と現在完了形(継続用法)の両方が使えるわけです。
どんな動作を表す動詞ならOK?
現在完了進行形だけではなく、現在完了形でも「継続」を表現できるのは、どんな動作を表す動詞でしょう?
(1) 一度始まったら、しばらく続く動作(行為・出来事)
stay(滞在する)、rain(雨が降る)、snow(雪が降る)など
(例) 私は先週からここに滞在しています。
●I have been staying here since last week.
●I have stayed here since last week.
たとえば「滞在する」という動作(行為)は、パパッと終わるものではありません。滞在し始めたら、しばらくその場に居続けますよね。
このように「一度始まったら、しばらく続く動作(出来事)」について言うときには、現在完了進行形だけではなく、現在完了形(継続用法)も使えます。
(2) それなりの期間、何度も繰り返してする動作(行為)
work(働く)、teach(教える)、study(勉強する)など
(例) 伊藤さんはここで10年働いている。
●Ms. Ito has been working here for ten years.
●Ms. Ito has worked here for ten years.
「働く」という行為はパパッと終わるものではありません。ふつう、一定の期間「働く」という行為を繰り返しますよね。
このように「それなりの期間、何度も繰り返してする動作(行為)」について言うときには、現在完了形(継続用法)を使うこともできます。
次のような動作の継続を表す場合には、現在完了進行形と現在完了形(継続用法)の両方が使える。
●一度始まったら、しばらく続く動作(行為・出来事)
●それなりの期間、何度も繰り返してする動作(行為)
上の点について専門書は次のように解説しています。「総合英語 Evergreen」(いいずな書店)からの引用です。
〈引用〉
learn(学ぶ)、study(勉強する)、rain(雨が降る)、snow(雪が降る)、sleep(寝る)、stay(滞在する)、play(競技する)、wait(待つ)、work(仕事をする)など、その意味自体に継続性が含まれる動詞は、現在完了形で「継続」の意味を表すことができる。
↑出典「総合英語 Evergreen」(いいずな書店)
引用した文の中に「その意味自体に継続性が含まれる動詞」とあります。
たしかに learn、study、rain といった動詞には、標準仕様で継続性が備わっている感じがありますよね。
わざわざ「継続」を強調する仕様(=現在完了進行形)にしなくても、もともと「継続仕様」になっている、という感じがします。
これらの動作(行為・出来事)は、継続することが前提となっている、ということですね。
現在完了進行形との使い分け
上で見たように、継続することが前提となっている動作(行為・出来事)であれば、動作の継続を表すときに、現在完了進行形と現在完了形(継続用法)の両方が使えます。
では、この2つに違いはあるのでしょうか?
大きな違いはない
専門書で調べてみました。2つの差はそれほど大きくはないようです。
「表現のための実践ロイヤル英文法」(旺文社)は、「ほとんど同じ」「ほとんど変わらない」(p70)としています。
また「総合英語 Evergreen」(いいずな書店)は「意味の違いは、たいがい、無視できるほどわずかである」(p95)と説明しています。
とは言うものの「こういう場合は、こっちを使うことがよくある」という「使い分けの傾向」はあります。
使い分けの傾向(1)
「どのくらいの間、継続しているか」によって使い分けることがあります。
●長期間、継続している場合→ 現在完了形(継続用法)を使う傾向がある
(例) 伊藤さんはここで10年働いている。
Ms. Ito has worked here for ten years.
●短期間、継続している場合→ 現在完了進行形を使う傾向がある
(例) 伊藤さんはここで1週間働いている(ここで働き始めて1週間だ)。
Ms. Ito has been working here for a week.
専門書には、次のような解説が載っています。
〈引用〉
一般的に、長期にわたって安定した状態を表す場合には、現在完了形が好まれる。
↑出典 「総合英語 Evergreen」(いいずな書店)
〈引用〉
live, stay, study, teach, work, rain, sleep などは現在完了形(継続)で、進行形にせずに使うことができる。短い時間のときは進行形がよく使われ(後略)
↑出典「パーフェクトコース参考書 わかるをつくる 中学英語 新装版」(Gakken)
長期間なら現在完了形(継続用法)、短期間なら現在完了進行形を使う傾向がある、ということですね。
「使い分けるの? メンドクサッ」と思われたかもしれません。
でも「こういう場合は、こっちを使わないと間違いだ」ということではないので、安心してくださいね。上で挙げた使い分けは「絶対的なルール」ではなく、あくまで「傾向」です。
実際、10年や20年といった長期間であっても、現在完了進行形を使うことは珍しくありません。
使い分けの傾向(2)
現在完了進行形を使うと、「これからも続けていく」というニュアンスを出すことができます。
(例)伊藤さんはここで10年働いている。
Ms. Ito has been working here for ten years.
→ 「10年前から現在まで仕事を続けてきた。そしてこれからも続けていく」というニュアンスが漂っています。
この点について「真・英文法大全」(KADOKAWA)は、次のように解説しています。
〈引用〉
have been -ingは「グイグイ続いている」雰囲気です。それゆえ(最終的には文脈判断ですが)大半の場合は「今後もそのままの勢いで続きそうな含み」があります。
↑出典 「真・英文法大全」(関正生 著、KADOKAWA)
現在完了進行形には「これからも続く」と思わせる雰囲気がある、ということですね。
一方、現在完了形(継続用法)の場合、動作(行為)がこれからも続くかどうかはわかりません。
(例) 伊藤さんはここで10年働いている(10年働いてきた)。
Ms. Ito has worked here for ten years.
→ 今後も働き続けるかもしれないし、10年の節目を機に辞めるかもしれません。話の流れ次第で、どちらの意味にも取れます。
●study, rain, work といった動詞の「継続」を表すには、現在完了進行形と現在完了形(継続用法)の両方が使える。その場合2つのどちらを使っても、違いはあまり大きくない。
●大きな違いはないが、使い分けの傾向はある。
(1) 長期の継続なら現在完了形(継続用法)、短期の継続なら現在完了進行形を使う傾向がある。
(2) 現在完了進行形を使うと「これからも続けていく」というニュアンスを出すことができる。
中学生にはどう教えるか?
ここまで現在完了進行形と現在完了形(継続用法)について、あれこれ細かく見てきました。
けれども、あまり細かいところまで中学生が理解するのは難しいですよね。
そこで、細かい情報を削ぎ落としながら、次の3つのポイントを教えてみてはいかがでしょうか。
現在完了進行形には「ずっと~している」という意味がある。これは2つの意味に受け取ることができる。
●絶え間なく(途切れることなく)ずっと続けている。今この瞬間もやっている。
(例) He has been playing soccer for an hour.
●習慣としてずっと続けている。同じことを何度も繰り返している。(今この瞬間もやっているとは限らない)
(例) He has been playing soccer for five years.
問題集などで、現在完了進行形は「ずっと~し続けている」と訳されることがよくあります。
そのため、「絶え間なく(途切れることなく)ずっと続けている」というイメージが強くなりがちです。
けれども実際には、「習慣として続けている・同じことを何度も繰り返している」という意味で使われることもよくあります。その点を子どもたちに教えてあげてください。
教科書の本文でも「同じことを何度も繰り返している」という意味で現在完了進行形が使われています↓
〈引用〉
Tina: I’ve been thinking about our trip to Hiroshima.
↑出典「Here We Go! English Course 3」(令和4年度版、光村図書出版)
上の英文は、修学旅行先の広島で歴史や平和について学んだ生徒(ティナ)が、地元に戻ってきたあとクラスメートに語った言葉です。
「(地元に戻ってきてから)修学旅行(で学んだこと)についてずっと考えてるの」という趣旨の発言です。
これは「毎日24時間ずっと考え続けている」という意味ではありませんよね。「修学旅行での体験について、何度も繰り返し考えている」と解釈するのが自然です。
このような点を説明すれば、子どもも会話文や長文が読みやすくなるでしょう。
「動作が続いている」と言うには、現在完了進行形を使う。「状態が続いている」と言うには、現在完了形(継続用法)を使う。
「動作」「状態」という言葉は抽象的でちょっとわかりづらいので、次のように補足することをオススメします。
動作 = 動きのあること
(例) watch(見る)、swim(泳ぐ)、study(勉強する)、work(働く)
状態 = 動きのないこと
(例) know(知っている)、have(持っている)、live(住んでいる)、busy(忙しい)、sick(具合が悪い)
※busy や sick を使うときには、be動詞が必要
work, study, teach, rain といった動詞には動きがある。けれども「ずっと~している」と言う場合、現在完了進行形も現在完了形(継続用法)も使える。
上の「ポイント3」については、「動作の継続は現在完了形でも表せる!?」のセクションで深く掘り下げて見てきました。
ですが中学生に教える場合、細かいところは削ぎ落とすのがオススメです。中学生が理解するには難しいですし、中学校ではそれほど細かい知識まで求められることはないでしょう。
●「一部の動詞は、現在完了進行形だけではなく現在完了形(継続用法)も使える」と説明する
●その動詞の例をいくつか挙げる
……という教え方がオススメです。
勉強が苦手な子の場合、「ポイント3」の説明は省く、というのもアリだと思います。
基本の「き」、つまり「ポイント1」と「ポイント2」にフォーカスしたほうが、子どもが文法問題を解きやすくなるはずです。
まとめ
この記事では現在完了進行形について、次の3点をお伝えしました。
(1)
「ずっと~している」には、2つの意味がある。
●絶え間なく(途切れることなく)続けている。今この瞬間もやっている。
●習慣としてずっと続けている。同じことを何度も繰り返している。(今この瞬間もやっているとは限らない)
(2)
動作が続いている→ 現在完了進行形を使う。
状態が続いている→ 現在完了形(継続用法)を使う。
(3)
動作が続いている場合でも、現在完了進行形と現在完了形(継続用法)の両方を使えるケースがある。
中学生に教える場合、まずは(1)と(2)にフォーカスすることをオススメします。そして習熟度によっては(3)も教えてみてください。
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現在完了形(継続用法)の教え方|勉強が苦手な中学生も理解しやすい
参考書籍のご紹介
●「英文法のエッセンス」(江藤裕之 著、大修館書店)
「英文法を暗記したけど、イマイチ理解していない」というモヤモヤを解消してくれる1冊。「なるほど! この文法には、こんな意味があったのか」という発見があります。
英文法を学んできた方、英語を教えている方にオススメです。
●「総合英語 Evergreen」(いいずな書店)
英文法の基礎をしっかりと固めたい、という方向けの文法書です。
私が特に気に入っているのが、各章の冒頭にある「これが基本」というコーナー。その章で扱う文法の「核」をひと通りザッと学べます。そんな予備知識のおかげで、その後の文法解説を理解しやすい作りになっています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。