勉強が苦手な子が英語の授業でぶつかる壁とは?

勉強が苦手な子が英語の授業でぶつかる壁とは? コラム

勉強が苦手な子に英語を教える中で、こんな経験はありませんか?

「文法をかみ砕いて説明しても、理解してもらえない。そこで、さらにかみ砕いて説明するけど、やはり理解してもらえない」

こういう場合、もしかしたら問題は「文法の説明がどの程度かみ砕かれているか」ではないかもしれません。

というのも勉強が苦手な子は、英語の授業で、ある大きな壁にぶつかることがあるからです。

その壁とは「そもそも日本語で論理的に考えることができない」ということ。つまり、筋道を立てて物事を考えることができないのです。そして論理的思考力が低いと、英語を学ぶときにつまずきやすくなります。

では、どんな点でつまずくのか? そういう子に英語を教える場合、どんな工夫をすればいいのか? この記事では、それについてお伝えします。

短期間で根本的に解決する方法は、(たぶん)ありません。ですが、教える側がちょっとした工夫をすれば、子どもたちもかなり英語を学びやすくなると思います。

具体的には、下の2つについて説明しますね。

  • 論理的思考力の低い子は、どこでつまずく?
  • 英語を教えるときの小さな工夫

論理的思考力の低い子は、どこでつまずく?

日本語で論理的に考えることができない子は、英語を学ぶとき、次のような点でつまずいてしまいます。

  • 係り受けがわからない
  • 話の要点がわからない
  • 指示語を理解できない
  • 話の流れをつかめない

係り受けがわからない

係り受けとは、「ある言葉が別の言葉とどんな関係にあるか」ということです。具体的には、「主語・述語」の関係や、「修飾・被修飾」の関係があります。

「私が昨日食べたピザはおいしかった」という文では、「ピザは」が主語、「おいしかった」が述語。「私が昨日食べた」が、「ピザ」を修飾している。

日本語の文を読んだときに、こういう係り受けを理解できないと、英文を正しく読んだり書いたりできません。

話の要点がわからない

論理的思考力の低い子は、話の要点をつかむことが苦手です。

たとえば、次の3つの文を見てください。「比較」の単元でよく出てくるパターンの文です。

  • A は B ほど大きくない。
  • B は A より大きい。
  • A は B より小さい。

要するに3つとも同じ内容なのですが、そのことに気づけない子もいます。そうなると、書き換え問題を解くのが難しくなります。

たとえ英文法の知識があったとしても、文法問題などに書かれている情報を整理し、要点をつかまないと、つまずいてしまいます。

指示語を理解できない

指示語というのは、「これ・この・こう」「それ・その・そう」などです。

指示語が何を指しているのかわからない子は、授業中の説明を聞いていたとしても、その内容を理解しているとはかぎりません。

たとえば、「これをもとに考えると……」などと説明されても、「これ」の意味がわからないと、何の話なのかは理解できませんよね。

話の流れをつかめない

論理的思考力の低い子は、話の流れをつかむのが苦手です。

今、何の話がなされているのか? その話は、さっきの話とどんなつながりがあるのか? そういうことを考えながら話の展開を追う、ということが苦手なのです。

たとえば didn’t の使い方について説明を聞いたあと、「では、練習問題を解いてみよう」と指示されたとします。すると子どもによっては、didn’t とは無関係の ing を使って問題を解こうとしたりするのです。

つまり、「文法の説明を聞く→ その説明を踏まえて問題を解く」という流れをつかめていないのです。

教える側としては、「え? どうしてここで ing が出てくるの?」とびっくりしてしまいます。でも、話の流れをつかめない子にとっては、「文法の説明」と「練習問題」の間につながりがないのでしょう。

英語を教えるときの小さな工夫

では、論理的思考力の低い子が英語の授業を理解しやすくなるために、教える側に何かできることはあるのでしょうか?

「英語を教えながら論理的思考力もしっかり育む」というのは、時間的に無理があるため現実的ではありません。ただし、ちょっとした工夫をすることは可能です。

ここでは、私が無料塾で教えながら実践してきたことや、簡単にできそうな工夫を3つご紹介しますね。

1. 話の流れをはっきりと示す

話の流れを、たとえば次のようにはっきりと示します。

(例1)
練習問題をさせるときに、「今説明した文法を使って、練習問題に取り組もう」と指示を出します。単に「では、練習問題を解いてみよう」と言うだけより、「文法の説明」と「練習問題」の関係がクリアになります。

(例2)
「だから」「でも」「たとえば」といった接続詞を強調しながら話します。接続詞の「前」と「後ろ」で、話がどのようにつながっているか? それを子どもに意識させるためです。

接続詞は、話の流れを示すための大事なシグナルです。けれど、そんな大事なシグナルも、聞いている人に気づいてもらわなければ意味がありません。

そこで、接続詞を(少しゆっくりと)強調しながら話をするのです。そうすれば子どもも、話の流れをつかみやすくなるでしょう。

ただし、くどくならない程度に強調してくださいね。接続詞が出てくるたびに大声で強調したら、「接続詞だけがやたらと印象に残った」なんてことになりかねませんから。

2. 「どうして?」と質問する

子どもが文法問題を解いたときに、「どうしてそういう答えにしたのか」と質問します。

解答の根拠をたずねるのは、子どもの理解度を把握するためだけではありません。子どもに「論理的に考える機会」を作ってあげることにもなるのです。

勉強が苦手な子は、当てずっぽうで問題を解くことがありますよね。ですが「どうして?」という質問に繰り返し答えていくうちに、理屈(根拠)に基づきながら問題を解けるようになる子もいるのです。

「根拠に基づいて答えを出す」というのは、大人にとっては当たり前のことかもしれません。ですが子どもの中には、「答えには根拠が必要だ」ということを知らない子もいるのです。

ですので、「〇〇だから、こういう答えにした」と考える機会を作ってあげることは、とても大事だと思います。

3. 図や表を使って説明する

子どもが情報を整理しやすくするために、図や表を使って説明するのもオススメです。

手の込んだ図や表である必要はありません。紙やホワイトボードにチャチャッと書くだけでも大丈夫です。

(例1)
下の3つの文を比べるとき、簡単に図にまとめるだけで、子どもがぐんと理解しやすくなります

  • A は B ほど大きくない。
  • B は A より大きい。
  • A は B より小さい
小さな円で囲まれたAと、大きな円で囲まれたB。

図で説明すれば、「3つとも同じことを言っている」というのが一目瞭然。子どもも理解しやすくなるでしょう。

(例2)
don’t / doesn’t / didn’t の使い分け方を説明する際、次のように言葉だけで説明すると、子どもは情報を整理しづらいかもしれません。

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過去の話をする場合は didn’t を使う。現在の話をする場合は、主語によって don’t と doesn’t を使い分ける。主語が「I・you・複数」のときは don’t、主語が「I・you 以外で単数」のときは doesn’t を使う。
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説明するとき、簡単な表を使って視覚にもアプローチしてみましょう。

don't, doesn't, didn'tの使い分け方を整理した表。

言葉だけでガーッと説明されるより、表があったほうが頭にスッと入ってきやすいですよね。

図や表は、なるべくシンプルなものにしましょう。図や表に情報をたくさん盛り込むと、かえってわかりづらくなり、子どもが読み解けなくなりますからね。

なるべく情報を削ぎ落してスッキリまとめると、子どもに要点が伝わりやすくなると思います。


上でご紹介したアイデアのうち、どれか使えそうなものがあれば、ぜひ実践してみてくださいね。