isn’t と doesn’t を使い分けられない中学生は、少なくないのではないでしょうか。
英語を教えている方の中には、「どう説明すれば理解しやすくなるだろう」とお悩みの方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、まず「isn’t と doesn’t を使い分けられない原因」を取り上げます。そして、その原因を踏まえながら「否定文の作り方を教えるときのポイント」を見ていきましょう。
さらに、テスト対策として「使い分けの簡単テクニック」もご紹介します。よかったら参考にしてみてください。
使い分けられない原因
中学生が isn’t と doesn’t を使い分けられない原因は、3つ考えられます。
主語が3人称単数なら機械的にdoesn’tを選んでしまう
(例) ( )内から適切な語を選びなさい。
Yuka ( isn’t / doesn’t ) busy today.
たとえば上の問題で doesn’t を選ぶ子がいます。主語が3人称単数であれば、機械的に doesn’t を選んでしまうのです。
「主語が3人称単数のときは don’t ではなく doesn’t を使う」というルールの印象が強いせいか、主語だけを見て「doesn’t を使うかどうか」を判断してしまうのです。
たとえ「be動詞の文」であっても、主語が3人称単数なら doesn’t を使ってしまう、というわけです。
「否定文」と「ふつうの文」がリンクしていない
子どもたちの頭の中で、「否定文」が「ふつうの文」(平叙文の肯定文)とリンクしていない可能性があります。
すでに英語の基礎を知っている方にとっては、「否定文・疑問文」は下の図のように「ふつうの文」とリンクしているはずです。

「否定文・疑問文」は「ふつうの文」を土台にして作りますよね。
ところが isn’t と doesn’t を使い分けられない子の場合、頭の中では「否定文」「疑問文」「ふつうの文」がバラバラに存在している恐れがあります。

つまり3種類の文が独立して、それぞれ無関係に存在しているのです。たとえば「否定文」は「否定文」だけで完結している、といった具合です。
そういった状態では、「ふつうの文」をもとに「否定文」を作る、という発想は生まれてこないでしょう。
そうなると否定文を正しく作れません。否定文を作るには、もとの文(ふつうの文)の構造を知っておく必要があるからです。
このように「否定文」と「ふつうの文」が互いにリンクしていない場合、「完成させたい否定文が、もともとはどんな文だったか」がわかりません。
すると当然、「be動詞を否定して isn’t にするのか、一般動詞を否定して doesn’t にするのか」という使い分けが難しくなってしまいます。
ふつうの文を正しく作れない
上で見てきたように、「否定文」を作るには「ふつうの文」(平叙文の肯定文)に立ち返る、という発想が必要です。
ですが「ふつうの文」に立ち返ったとしても、そもそも「ふつうの文」を正しく作れなければ「否定文」も作れません。
たとえば次のような英文を書く子は、isn’t と doesn’t を使い分けられないでしょう。
彼はサッカーをします。
× He is play soccer.
否定文を作る4ステップ&教え方
ここまで、isn’t と doesn’t を使い分けられない原因を3つ見てきました。
● 主語が3人称単数なら機械的に doesn’t を選んでしまう
●「否定文」と「ふつうの文」がリンクしていない
●「ふつうの文」を正しく作れない
では、これらの原因を踏まえた上で、「否定文を作る4ステップ」と教えるときのポイントを見ていきましょう。
Step 1 日本語でふつうの文を作る
(例題) 英語にしなさい。
(1) この本は人気がありません。
(2) トムは納豆を食べません。
Step1では、日本語の否定文をふつうの文に書き換えます。
〈教え方の例〉
いきなり英語で否定文を書くのではなく、まず日本語でふつうの文を作ってみよう。
たとえば「森さんは教師ではありません」という文なら、「森さんは教師です」というふつうの文に書き換えるんだ。
では、例題(1)と(2)の日本語をふつうの文に書き換えると、どうなるかな?
ここでのポイントは「子どもが自力で書き換えてみる」ということです。
大人が手順を説明しながら全部書き換えてみせる、というのはオススメしません。
子どもが実際に自分でやりながら手順を追っていったほうが、断然記憶に残りやすくなります。
また、国語が苦手な子の場合、(たとえ日本語であっても)ふつうの文にパッと書き換えられないことがあります。ですので、自力で書き換える練習をしてみることが大事です。
Step 2 ふつうの文を英語になおす
Step 1で作ったふつうの文を英語に書き換えます。
……と言うのは簡単ですが、子どもたちにとっては結構ハードルの高いタスクです。次のような間違いがよくあります。
(1) この本は人気があります。
× This book popular.
(2) トムは納豆を食べます。
× Tom is eat natto.
× Tom eat natto.
子どもが上のように間違えた場合、どのように指導すればいいのか? その方法は、のちほど「英語でふつうの文を作れない子への指導」のセクションで解説します。
ひとまず「ふつうの文を正しく書けた」という前提で、次のステップに進みましょう。
Step 3 動詞に注目する
Step 2で作った英文(ふつうの文)の動詞に注目します。
〈教え方の例〉
否定文を作るには、動詞に注目しよう。主語の後ろに一般動詞とbe動詞、どちらがあるかをチェックするんだ。

教えるときのポイント
ここでのポイントは「何に注目すべきか、何をチェックすべきかを具体的に説明する」ということです。
いきなり「be動詞の文を否定文にするには、be動詞の後ろに not を置く」などと教えるのはオススメしません。
というのも isn’t と doesn’t を使い分けられない子の場合、「be動詞の文・一般動詞の文」と言われてもピンと来ないからです。
ですので「主語の後ろに一般動詞とbe動詞、どちらがあるかをチェックする」と具体的に言ったほうが理解しやすいでしょう。
Step 4 否定文を作る
主語の後ろに一般動詞とbe動詞、どちらがあるかを確認したら、いよいよ否定文を作ります。
〈教え方の例〉
●主語の後ろにbe動詞がある場合
→ be動詞の後ろに not を入れる
This book is popular.
↓
This book is not popular.
This book isn’t popular.
●主語の後ろに一般動詞がある場合
→ 一般動詞の前に does not を置く。一般動詞は原形(もとの形)にする。
Tom eats natto.
↓
Tom does not eat natto.
Tom doesn’t eat natto.
isn’t と doesn’t を使い分けられない子は、「動詞に注目する」というクセがついていません。
ですので、次のポイントを強調しながら教えてみてください。
●ふつうの文を見たとき、主語の後ろに何動詞があるかを考える。
●一般動詞とbe動詞、どちらがあるかによって、否定文の作り方が決まる。
英語でふつうの文を作れない子への指導
否定文を作るには、まず、ふつうの文(平叙文の肯定文)を正しく作れないとなりません。
では、ふつうの文をうまく作れない子には、どのように指導すればいいのか? その例を2つ挙げますね。
※「指導の例」を飛ばして先に進みたい方は、こちらへ→「反復練習で知識を定着」
指導の例1
(例題)この本は人気があります。
× This book popular.
英文を作るときには、主語→動詞→そのほか、の順で単語を並べよう。

(※live(住んでいる)、have(持っている)などには、目に見える動きはないが、これらの単語は一般動詞に含まれる。)
「走る」「食べる」など、動作(動き)について言うときには、主語の後ろに一般動詞を置く。「走る」なら run、「食べる」ならeat だね。
では「うれしい」「有名だ」などと言うときには、どうするか? 「うれしい」や「有名だ」には動作(動き)がないよね。そういう場合は、主語の後ろにbe動詞が必要だよ。
(例) 私はうれしい。
主語→ be動詞→ そのほか
I → am → happy.
では「この本は人気があります」を英語にすると、どうなるかな?
「人気がある」という表現には動作(動き)がないね。だから主語の後ろにbe動詞が必要だよ。
主語→ be動詞→ そのほか
This book → is → popular.
指導の例2
(例題)トムは納豆を食べます。
× Tom is eat natto.
英語には「主語の後ろには動詞を1つだけ置く」というルールがあるよ。

〈Tom is eat natto.〉の場合、is か eat、どちらか1つしか使えない。

では、どちらを使うか?
動作(動き)について言うときには、一般動詞を使おう。動作(動き)以外の話をするときには、be動詞を使うよ。
「トムは納豆を食べます」の場合、「食べる」という動作の話をしているよね。だから一般動詞の eatを使おう。
主語→ 一般動詞→ そのほか
Tom → eat → natto.
〈Tom eat natto.〉という文ができたけど、もう1つ気をつけたいことがあるよ。
主語が「I・you 以外で単数」のときには、一般動詞に s をつけよう。
Tom eats natto.
すでに過去形を習っている子の場合、次の注意点も付け加えてください。
「一般動詞に s をつけるのは、現在の話をしているときだけだよ。過去の話をする場合は、s はつけないよ」
(例)トムは納豆を食べました。
Tom ate natto.
反復練習で知識を定着
ここまで見てきたように、否定文を作るには、まず、ふつうの文に立ち返る必要があります。それを習慣づけるには反復練習が欠かせません。
下のような練習問題に取り組んでみてください。
【問1】
日本語と同じ意味になるように、( )内から適切な語を選びなさい。
(1) 森さんは教師ではありません。
Mr. Mori ( is / does ) not a teacher.
(2) 母は英語を話しません。
My mother ( is / does ) not speak English.
否定文を作るには、まず、ふつうの文を作ってみること。
(1) 森さんは教師ではありません。
【日本語でふつうの文を作る】
森さんは教師です。
↓
【英語にする】
Mr. Mori is a teacher.
↓
【否定文にする】
Mr. Mori is not a teacher.
(2)母は英語を話しません。
【日本語でふつうの文を作る】
母は英語を話します。
↓
【英語にする】
My mother speaks English.
↓
【否定文にする】
My mother does not speak English.
【問2】
日本語と同じ意味になるように、下線部に適切な語を入れなさい。
(例題) 母は英語を話しません。
My mother _ speak English.
※does not を入れたいが、下線部が1つしかないので短縮形 doesn’t を使う。
(1) ケンはラグビーをしません。
Ken _ play rugby.
(2) エリは東京出身ではありません。
Eri _ from Tokyo.
否定文を作るには、まず、ふつうの文を作ってみること。
(1) ケンはラグビーをしません。
【日本語でふつうの文を作る】
ケンはラグビーをします。
↓
【英語にする】
Ken plays rugby.
↓
【否定文にする】
Ken does not play rugby.
↓
【短縮形にする】
Ken doesn’t play rugby.
(2) エリは東京出身ではありません。
【日本語でふつうの文を作る】
エリは東京出身です。
↓
【英語にする】
Eri is from Tokyo.
↓
【否定文にする】
Eri is not from Tokyo.
↓
【短縮形にする】
Eri isn’t from Tokyo.
試験対策の簡単テクニック
isn’t と doesn’t を使い分けるには、ふつうの文(平叙文の肯定文)の構造を把握することが大事です。
ですが、文の構造を根本的に理解するには、少し時間がかかることもあるでしょう。「試験に間に合わない!」という場合もあるかもしれません。
そこで試験対策のテクニックもご紹介します。isn’t と doesn’t、どちらを選ぶか迷ったときに使えるテクニックです。英文の構造を理解していなくても使えます。
〈isn’tとdoesn’tの選び方〉
●〈一般動詞の原形〉がある場合
→ doesn’t (does not)を選ぶ
●〈一般動詞の原形〉がない場合
→ isn’t (is not)を選ぶ
※原形とは「もとの形」。動詞に s や ing などをつけない形のこと。
上のテクニックを使って、問題を解いてみましょう。
(1)(2)→ 適切な語を選びなさい。
(3)→ 日本語に合うように下線部に適切な語を入れなさい。
(1) Takuya (isn’t / doesn’t ) live here.
(2) Takuya ( is / does ) not live here.
(3) タクヤはここに住んでいません。
Takuya _ live here.
→ (1)~(3)いずれの場合も〈一般動詞の原形〉live があるので、doesn’t (does not) を選びます。
(1) Yuka (isn’t / doesn’t ) busy today.
(2) Yuka ( is / does ) not busy today.
(3) ユカは今日いそがしくありません。
Yuka _ busy today.
→ (1)~(3)いずれの場合も〈一般動詞の原形〉がないので、isn’t (is not)を選びます。
文の構造を根本的に理解できていないうちは、上のテクニックを使うのもひとつの手です。
ただし長期的には、「一般動詞の文」と「be動詞の文」の違いを理解できるようにするのが理想的だと思います。
まとめ
isn’t と doesn’t を使い分けられない子の場合、「否定文」が「ふつうの文」(平叙文の肯定文)とリンクしていない可能性があります。
また「否定文を作るには動詞に注目する」ということを知らない子もいます。
そこで、使い分け方を教えるときには下の2点を強調してみてください。
●否定文を作るには、まず「ふつうの文(平叙文の肯定文)」に立ち返る。
●「ふつうの文」の動詞に注目する。主語の後ろに一般動詞とbe動詞、どちらがあるかをチェックする。
よかったら実践してみてくださいね。
オススメ記事のご紹介
● 〈3単現のS〉の教え方。中学生に分かりやすく説明する方法とは?
→ 「主語が3人称単数で時制が現在のときは、一般動詞の最後に s をつける」……というルールは文法用語がてんこ盛りで複雑ですよね。
でも、教え方を少し工夫すれば、勉強が苦手な子どもたちも理解しやすくなりますよ。その教え方をご紹介しています。
● Do you~?とAre you~?の使い分け|中学生への教え方【試験対策】
→ Do you~? と Are you ~? を使い分けるためのテクニックをご紹介しています。試験対策として使えますよ。
オススメの問題集3選
書店やネットで英語の基礎問題集を選ぼうとしたけど、たくさんありすぎて、結局どれがいいのかわからなかった……という経験はありませんか?
最近の問題集は、見た目がよく似ています。パッと見たところ、どの問題集も「これなら英語ができるようになるかも!」と思わせる雰囲気が漂っていますよね。
ですが残念ながら、「見た目は華やかだけど、中身はイマイチ」という問題集も中にはあります。
「基礎問題集のはずなのに、英語が苦手な子のことを本当に考えて作られているのだろうか」と思ってしまう問題集もあるのです。
正直な話、そういう問題集は子どもたちに使ってほしくないなあ、と思います。子どもたちは勉強しようと頑張っているわけですからね。
そこで、私が「これは使いやすい!」と思う基礎問題集を3種類ご紹介します。どれも一長一短ではありますが、英語の基礎を学びやすい作りになっています。
よかったら参考にしてみてください。
(1)「ひとつずつ すこしずつ ホントにわかる」(英語)学年別シリーズ(新興出版社)
文法の解説がスッキリまとまっており、要点がパッとわかります。
また、問題によっては例題や解き方が載っています。さらに並べかえ問題には、パズル感覚で取り組めるような工夫が施されています。
今回ご紹介する3種類の中では、勉強が苦手な子にとって、最も取り組みやすい練習問題だと思います。
(2)「ひとつひとつわかりやすく。改訂版」(英語)学年別シリーズ(Gakken)
文法の解説がとにかくわかりやすいです。「文法の教え方がわからない」という保護者や家庭教師の方が、この解説を参考にしながら教える、というのもオススメです。
イラストが豊富なので、「文字だけで説明されるより、イラストもあったほうが理解しやすい」というお子さんに向いています。
(3)「英文法 パターンドリル」学年別シリーズ(文英堂)
知識を定着させるためのドリルです。
各単元で、重要構文が何度も繰り返し出てきます。「この単元のキモは何か?」を意識しやすい作りです。
徹底的に反復練習をしたい、というお子さんにオススメです。
「それぞれの問題集の良い点・注意点をくわしく知りたい」という方は、下の記事をチェックしてみてください。
英語が苦手な中学生向け基礎問題集3選。使いやすさを比べてみた
最後までお読みいただき、ありがとうございました。