勉強が苦手な子に、現在完了形の継続用法をどう教えるか? その手順をくわしく解説します。
勉強が苦手な子に教えるときは、あせらないことが大事。ガーッと一気に説明するのではなく、ちょっとずつ着実に前へ進みましょう。少し時間はかかりますが、子どもが文法を理解しやすくなりますよ。
「どんな文を作るのか」を説明する
文法の説明に入る前に、「どんな文を作るのか」を子どもに説明しましょう。
〈説明の例〉
今回は「ずっと~している」「ずっと~だ」と表現する方法を学習しよう。
たとえば4月になるとクラス替えがあったり、部活に新入生が入ってきたりするよね。そのとき次のように自己紹介をすることがあるかもしれない。
●私は10歳のときからずっとK-popのファンです。
●私は長い間ずっと神戸に住んでいます。
このように「昔から今まで、ずっと~している」「ずっと~だ」と伝える方法を見ていこう。
「どんな文を作るのか」を子どもがイメージしやすいように、具体的な例文を挙げるのがポイントです。
授業の始めに、下のような問題集の解説を読み上げるのはオススメしません。
〈オススメしない解説〉
●現在完了形の継続用法は「過去から現在まで、ある状態がずっと続いている」ということを表す。
●「過去のあるときに始まった状態が今も継続している」と表す方法が継続用法である。
いきなり上のような抽象的な話をされても、勉強が苦手な子にとってはわかりづらいでしょう。
「何を学ぶのか」を説明するときはシンプルな言葉を使い、子どもが取っ付きやすい例文を出すのがポイントです。
過去分詞に慣れさせる
これまでの単元で、すでに過去分詞を習っている子の場合、(2)に飛んでください。
(2) 継続用法の過去分詞に慣れさせる
「過去分詞とは?」を説明する
「過去分詞とはどういうものか」について説明しましょう。
〈説明の例〉
「ずっと~している」「ずっと~だ」という文を作るには、過去分詞というパーツが必要だよ。過去分詞は動詞が変化したものなんだ。
たとえば「知っている」という意味の know は、次のように変化する。
原形 know
過去形 knew
過去分詞 known
過去分詞は過去形とは別物だよ。まぎらわしいけど、過去分詞は「過去」とは関係がない。「過去分詞」というのは単にパーツの名前だと思ってね。
教科書の後ろのほうに、不規則動詞の長いリストが載っています。
ですが「過去分詞とは何か?」を説明したあと、いきなりあの長いリストを子どもに見せるのはオススメしません。
子どもが「こんなに覚えるなんてムリ!」とあきらめるかもしれないからです。何事もハードルが高すぎると、挑戦しようという気にすらなれませんよね。
そこで、まずは「継続用法でよく出てくる過去分詞」に慣れることから始めましょう。
継続用法の過去分詞に慣れさせる
文全体の作り方に入る前に、継続用法でよく出てくる過去分詞を練習しておきます。
子どもにもよりますが、あらかじめ過去分詞に慣れておかないと、文を作るときが大変です。
見慣れない過去分詞を書き写しながら、同時に文全体の作り方も覚えないとならないからです。
そういうマルチタスクは、勉強が苦手な子にとって簡単ではありません。ですので、継続用法でよく出てくる過去分詞を練習しておきましょう。
継続用法でよく出てくる過去分詞
原形 | 過去形 | 過去分詞 |
---|---|---|
live | lived | lived |
love | loved | loved |
know | knew | known |
have | had | had |
〈have+過去分詞〉について教える
基本的な文の作り方を説明する
基本的な文の作り方について、下の3点を子どもに教えましょう。
〈基本的な文の作り方〉
●「ずっと~している」「ずっと~だ」など、「過去から現在まで、同じことが続いている」と伝えるには、現在完了形を使う。
●現在完了形とは〈have+過去分詞〉というカタマリのこと。
私は長い間ずっと神戸に住んでいます。
I have lived in Kobe for a long time.
※〈for a long time〉は「長い間」という意味。
●現在完了形の have は「持っている」と訳さない。〈have+過去分詞〉というカタマリ全体で「ずっと~している」「ずっと~だ」という意味になる。
forやsinceは後回し
継続用法では for や since がよく使われます。ですが、基本的な文の作り方を教える段階では、とりあえず〈for a long time〉だけを教えておくことをオススメします。
というのも子どもにとっては、「〈have+過去分詞〉に慣れながら、for や since の使い分け方も覚える」というのは大変だからです。
まずは〈have+過去分詞〉に慣れ、のちほど for や since について学ぶのがいいでしょう。
ひとまず〈have+過去分詞〉の文法問題に取り組んでみてください。
日本語と同じ意味になるように、下線部に適切な語を入れましょう。
1. 私は長い間ユミを知っています(ユミと知り合いです)。
_ _ _ Yumi for a long time.
2. 彼らは長い間大阪に住んでいます。
_ _ _ in Osaka for a long time.
解答
1. I have known
2. They have lived
〈have had〉には要注意
〈have+過去分詞〉を習ったばかりの子が特に混乱しやすいのが、〈have had〉というカタマリです。
(例) 彼らは長い間犬を飼っています。
They have had a dog for a long time.
「have と had を並べて書いたらヘンじゃないか?」と疑問に思う子がよくいるのです。そういう場合、次のように説明してあげてください。
〈have had の説明〉
〈have had〉というカタマリはちょっとヘンな感じがするよね。でも、have と had を並べて書くこともあるんだよ。
〈have had〉の have は、現在完了形を作るための have だね。had は「持っている・(動物を)飼っている」という意味の have を過去分詞にしたものだよ。
hasを使うケースを教える
〈have+過去分詞〉ではなく、〈has+過去分詞〉を使うケースについて、次の点を教えましょう。
〈hasを使うケース〉
主語が「I・you 以外で単数」のときは、〈has+過去分詞〉というカタマリを使う。
ケンは長い間神戸に住んでいます。
Ken has lived in Kobe for a long time.
上のように「I・you 以外で単数」と教えれば、「3人称」という用語を使う必要がありません。「人称」という概念をなかなか理解できない子には、ぜひ「I・you 以外で単数」と説明してみてください。
説明したあとは文法問題に入りましょう。子どもが have と has を使い分けられるか、チェックしてくださいね。
日本語と同じ意味になるように、下線部に適切な語を入れましょう。have と has、どちらを使うかよく考えること。
1. 私の祖父は長い間ずっとネコを飼っています。
My grandfather _ _ a cat for a long time.
2. ケンとタカシは長い間ずっと東京に住んでいます。
Ken and Takashi _ _ in Tokyo for a long time.
解答
1. has had
2. have lived
forとsinceの使い方を教える
〈have+過去分詞〉のカタマリに慣れたら、ようやくここで for と since の出番です。
まずは for の使い方を説明しましょう。
〈説明の例〉
ここまで「長い間ずっと~している」という文が出てきたね。でも「長い間」と言った場合、「長い間ってどのくらい?」と思う人がいるかもしれない。
そこで「3週間」や「5年間」など具体的に言う方法も覚えよう。
たとえば「5年間」は〈for five years〉と言うよ。for には「~の間」という意味がある。〈for five years〉で、「5年の間」つまり「5年間」という意味になるんだ。
(例) 彼は5年間ずっと大阪に住んでいます。
He has lived in Osaka for five years.
すでに出てきた〈for a long time〉は、「長い時の間」つまり「長い間」という意味だね。
「3週間」や「2日間」なども、同じように for を使って表せるよ。
3週間 for three weeks
2日間 for two days
子どもが for の使い方を理解したか、文法問題で確認してみてください。
日本語と同じ意味になるように、( )内の語句を並べかえましょう。
1. 私たちは10年間ユミと知り合いです(ユミのことを10年間ずっと知っています)。
( ten / have / Yumi / we / known / years / for ).
2. ケンは3年間ずっとネコを飼っています。
( for / has / a cat / years / had / Ken / three ).
解答
1. We have known Yumi for ten years.
2. Ken has had a cat for three years.
次は since について説明しましょう。
〈説明の例〉
for を使うと「どのくらいの間、ずっと~しているのか」を表すことができたね。次は、「いつからずっと~しているのか」と言う方法を見ていこう。
「~から」を表すには since を使うよ。
(例)私は去年からずっと東京に住んでいます。
I have lived in Tokyo since last year.
今朝から since this morning
私が5歳のときから since I was five
for と since が頭の中でごちゃ混ぜにならないように、意味を整理しておこう。
●for(~の間)→ 期間(時間の長さ)を表す
●since (~から)→ 出発点を表す
for と since を使い分けられるか、文法問題で確認してみてください。
日本語と同じ意味になるように、下線部に適切な語を入れましょう。for と since、どちらを使うかよく考えること。
1. 私は10歳のときからずっと K-pop が大好きです。
I _ _ K-pop _ I was ten.
2. タクヤは3年間ずっと名古屋に住んでいます。
Takuya _ _ in Nagoya _ three years.
解答
1. have loved / since
2. has lived / for
現在形との違いを説明する
子どもが継続用法に慣れたところで、現在形と現在完了形(継続用法)の違いを説明しましょう。
〈説明の例〉
(a) 私は K-pop が大好きです。
(b) 私は10歳のときからずっと K-pop が大好きです。
日本語ではどちらの文も「大好きです」となっているけれど、英語にするときは文の作り方がそれぞれ違うよ。
(a) 私は K-pop が大好きです。
→「今、K-pop が大好きだ」という意味だから現在形を使おう。
I love K-pop.
(b) 私は10歳のときからずっと K-pop が大好きです。
→「今だけではなくて、昔から今までずっと大好きだ」という意味だね。このように「過去から現在までずっと~だ」という場合は現在完了形を使おう。
I have loved K-pop since I was ten.
日本語だけを見ると、(a)も(b)も「大好きです」となっている。でも、英語にするときには「いつの話をしているのか」によって、文の作り方が変わるから注意しよう。
子どもたちは、日本文の「意味」ではなく「字面」だけを頼りに英訳することがよくあります。そのため、現在完了形(継続用法)を使うべきところで現在形を使ってしまうことがあるのです。
そこで、字面だけではなく「いつの話をしているのか」を意識させることが大事です。
beenについて説明する
子どもにとって be動詞はただでさえ難しいものですが、過去分詞の been は一段とややこしいようです。悪戦苦闘する子も多いでしょう。
そこで、been の使い方を教えるタイミングとしては「継続用法に慣れ、現在形との違いを理解したあと」をオススメします。
一度にあれもこれも教えないほうが、子どもが情報を整理しやすくなるからです。
また、been については現在形と比較しながら説明すると、勉強が苦手な子も理解しやすくなるでしょう。
〈説明の例〉
次の日本語を英語にしてみよう。
(a) 私はK-popのファンです。
(b) 私は10歳のときからずっとK-popのファンです。
(a)は現在の話をしているから、be動詞の現在形を使おう。
I am a K-pop fan.
(b)は「過去から現在まで、ずっとファンだ」と言っているから、現在形ではなく現在完了形を使おう。
I have been a K-pop fan since I was ten.
been は be動詞の過去分詞だよ。〈I am a K-pop fan.〉の am が過去分詞に変化すると、been になるんだ。
be動詞の現在形は am、are、is の3つあるけど、過去分詞は been だけ。am の過去分詞も、are の過去分詞も、is の過去分詞も been だよ。
彼は忙しいです。
He is busy.
↓
彼は先月からずっと忙しいです。
He has been busy since last month.
been の使い方に慣れるには、文法問題をたくさん解くのが一番です。少し難しいかもしれませんが、下のような問題にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。
( )内の指示にしたがって文全体を書きかえましょう。
1. I am sick. (for two days を加えて現在完了形の文にする)
2. Yumi is in Osaka. (since last week を加えて現在完了形の文にする)
解答
1. I have been sick for two days.
2. Yumi has been in Osaka since last week.
まとめ
この記事では、継続用法の教え方についてお伝えしました。いちばん大事なポイントはこちらです。
「一気にガーッと教えない」
教えることが多いと、ついあせってしまいますよね。でも、まずは子どもが基本の形〈have+過去分詞〉に慣れるよう、指導してあげてください。
そして〈have+過去分詞〉という土台をしっかり作った上で、そのほかのパーツ(has, since, for, beenなど)を登場させるのがいいでしょう。
あせらず少しずつ教えてみてくださいね。急がば回れ、です。
オススメの問題集3選
書店やネットで英語の基礎問題集を選ぼうとしたけど、たくさんありすぎて、結局どれがいいのかわからなかった……という経験はありませんか?
そこで、「これは使いやすい」と私が思った基礎問題集を3種類ご紹介します。どれも一長一短ではありますが、英語の基礎を学びやすい作りになっています。
よかったら参考にしてみてください。
(1)「ひとつずつ すこしずつ ホントにわかる」(英語)学年別シリーズ(新興出版社)
文法の解説がスッキリまとまっており、要点がパッとわかります。
また、単元によっては練習問題の前に、例題と解答が載っています。これはポイントが高いと思います。文法問題に慣れていない子も「こんなふうに解けばいいんだな」というのがわかりますからね。
さらに並べかえ問題には、パズル感覚で取り組めるような工夫が施されています。
今回ご紹介する3種類の中では、勉強が苦手な子にとって、最も取り組みやすい練習問題だと思います。
↑中2英語・中3英語もあります。(現在完了形は「中3英語」に載っています)
(2)「ひとつひとつわかりやすく。改訂版」(英語)学年別シリーズ(Gakken)
文法の解説がとにかくわかりやすいです。「文法の教え方がわからない」という保護者や家庭教師の方が、この解説を参考にしながら教える、というのもオススメです。
イラストが豊富なので、「文字だけで説明されるより、イラストもあったほうが理解しやすい」というお子さんに向いています。
↑中2英語・中3英語もあります。(現在完了形は「中2英語」と「中3英語」に載っています)
(3)「英文法 パターンドリル」学年別シリーズ(文英堂)
知識を定着させるためのドリルです(文法の解説は最小限に抑えられています)。
各単元で、重要構文が何度も繰り返し出てきます。これぞ、まさに「ドリル」。徹底的に反復練習をしたい、というお子さんにオススメです。
「この単元のキモは何か?」を意識しやすい作りになっています。
↑中2英文法・中3英文法もあります。(現在完了形は「中3英文法」に載っています)
「それぞれの問題集の良い点・注意点をくわしく知りたい」という方は、下の記事をチェックしてみてください。
【徹底比較】英語が苦手な中学生向け基礎問題集3選。使いやすさを比べてみた
最後までお読みいただき、ありがとうございました。