英単語をほとんど(あるいは、まったく)読めない中学生に、どうやって読み方を教えればいいのか? 今回はその方法をご紹介します。
教え方を少し工夫すれば、勉強が苦手な子も、単語を読むことへの抵抗感が和らぎますよ。
オススメの教え方「ハイブリッド方式」
英単語の読み方を身に付ける方法としては、一般的には次の2つが挙げられます。
- フォニックスと呼ばれる「読み方のルール」を学ぶ
- 多くの単語に接する中で、自然と読み方を覚える(「習うより慣れよ」ですね)
では、フォニックスと「習うより慣れよ」方式のうち、勉強が苦手な中学生に向いているのはどちらか?
結論から言うと、私がオススメするのは、この2つを組み合わせたハイブリッド方式です。
というのも、フォニックスと「習うより慣れよ」方式にはそれぞれ問題点があるのですが、ハイブリッドにすることでその問題点をカバーできるのです。
では、その問題点とハイブリッド方式について、順にご説明していきますね。
フォニックスの問題点
フォニックスは、「つづりと音の間にある関係性を覚える」という学習方法です。ざっくり言うと、「読み方のルールをきちんと学ぶ」ということですね。
このフォニックスの問題点は、「覚えるべきルールが多い」ということです。ルールが山ほどあるので、重要なものを厳選して教えたとしても、かなりの時間が必要でしょう。
また、勉強が苦手な子にとって、英語のルールをたくさん覚えるというのは、とても負担の大きな作業です。途中で飽きたり、勉強が苦痛になったりするかもしれません。
「習うより慣れよ」の問題点
「習うより慣れよ」方式には、心理的な問題点があります。
なぜ make は「マケ」ではなく「メイク」と読むのか? その理屈が分からないことには、読む気になれない。そんなふうに抵抗感を持っている子もいるのです。
「理屈を知りたい」と思うのは当然ですよね。読み方のルールを知らない子にとって、英単語は単なる「文字の羅列」。そんな単語の読み方を丸暗記するなんて、気が進まないでしょう。
あるいは、「ワケの分からない“文字の羅列”を読むなんて、自分には無理」と感じているような子もいます。
ここまで見てきたように、フォニックスと「習うより慣れよ」方式には、それぞれ問題点があります。
では、どうやって単語の読み方を教えればいいのか? ここで登場するのがハイブリッド方式です。
ハイブリッド方式の教え方
これは、フォニックスと「習うより慣れよ」方式を組み合わせた教え方です。
「2つを無理やりくっつけた」という苦肉の策(?)ではあるのですが、自分で試してみたところ、結構手応えがありました。ぜひ、お試しください。
ハイブリッド方式では、3つのステップに分けて教えます。
1. フォニックスの基本的なルールをいくつか教える
まず、フォニックスの中でも、特に大事なルールを少しだけ選んで教えます。
たとえば、「単語の最後にある e は発音しない」「a は、アと発音する場合と、エイと発音する場合がある」などです。
↓ オススメの基本ルールを5つご紹介します。興味のある方はタップ(クリック)してみてください。
(1) 単語の最後にある e は発音しない(例 name, like)
このルールは特に大事です。これを知らないと、最後の e も(ローマ字読みで)発音したくなります。
(2) a は、「エイ」と発音することもある(例 make, take)
ローマ字読みに慣れている子は、「ア」の発音しか知らないことが多いです。
(3) u は、「ア」と発音することもある(例 run, cut)
ローマ字読みからは想像もできない読み方なので、教える価値は大きいです。
(4) o は、「ア」と発音することもある(例 come, love)
この発音も、ローマ字読みからは想像もできませんよね。
(5) ea という組み合わせは、「イー」と発音する(例 eat, read)
これを教えれば、「アルファベットが2つ組み合わさると、特別な読み方をすることがある」ということを、子どもたちに(ざっくりとでもいいので)知ってもらえます。
ステップ1の狙いは、「読み方にはちゃんとルールがある」「ローマ字読みとは違うルールがある」と、子どもたちに知ってもらうことです。
大事なのは、「フォニックスのルールを覚えてもらう」というよりは、「ルールが存在するという事実を知ってもらう」ことです。
もちろん、ルールも少しは覚えてもらいたいですけど、ルールの存在を知ってもらうだけでも価値があります。
というのも、「ちゃんとルールがあるんだ」と子どもが知れば、「理屈が分からないものを読む気にはなれない」という心理的な抵抗感も和らぐはずだからです。
まずはルールの存在を知ること。これが、単語を読めるようになるための第一歩です。
↑「読み方のルールをもっと知りたい」という保護者や家庭教師の方にオススメ。日本語話者にとってなじみのある「あいうえお」を使って教えてくれます。フォニックスを学ぶことへのハードルを下げた画期的な一冊です。
2. 簡単な単語の読み方を教える
ステップ1で教えたルールをもとに、簡単な単語の読み方を教えます。
(例) make, take, eat, read, love, come
〈教え方の例〉
make の a は、「ア」じゃなくて「エイ」と発音するよ。そして、最後の e は発音しない。
ということは、make は「(短い)ム・エイ・(短い)ク」となる。これを速く言うと、「メイク」になるよ。
このように単語を5~6個挙げて読み方を教えたあと、読む練習に入ります。その5~6個の単語を自力で読めるようにするのです。
このステップ2の狙いは、子どもに「自分も単語をちゃんと読めるんだ」という自信を持ってもらうことです。
「単語を読むなんて自分には無理」と感じているような子は、単語をいくつか読めるようになると、「意外と出来た」と言って喜ぶことがあります。
今まで「単なる文字の羅列」だったものを、単語として認識し、読めるようになる。それは、間違いなく大きな自信になるでしょう。
そして自信を持てれば、難しい単語が出てきても、何とか自分で読んでみようという気になれます。
3. 習うより慣れよ
子どもが自信を持てたら、あとは、「習うより慣れよ」です。
ステップ2で扱った単語や、教科書によく出てくる単語(play, live, have など)をリストにし、子どもに読み方を覚えてもらいます。
単語の数は、最初は5~10個くらいで十分です。いきなり長い単語リストを見せられた日には、やる気もなくなってしまいますからね。「ちょっと頑張れば読めるようになるかも」と子どもが思えるくらいの数が理想的です。
単語リストには、読み方(カタカナ)と意味も載せておきます。そして、カタカナを見なくても英単語をスラスラ読めるようになるまで練習してもらいます。
単語をまったく読めなかった状態から、5~10個読めるようになる。これには本当に大きな意味があります。「自分もできる」と思えれば、この先、文法問題にもチャレンジしやすくなりますからね。
まとめ
この記事でご紹介したのは、単語の読み方を教えるための3ステップです。
1. フォニックスの基本的なルールをいくつか教える
→「読み方にはルールが存在する」ということ自体を子どもに知ってもらう。「理屈が分からないものは読む気になれない」という心理的な抵抗感を和らげる。
2. 簡単な単語の読み方を教える
→ 子どもに「自分もちゃんと読める!」という自信を持ってもらう。
3. 習うより慣れよ
→ 単語(5~10個)を読む練習に入る。
子どもたちの中には、「単語を読むなんて、自分にはムリ」と思い込んでいる子もいます。その心理的な抵抗感をまずは和らげてあげてくださいね。
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そこで、「これは使いやすい」と私が思った基礎問題集を3種類ご紹介します。どれも一長一短ではありますが、英語の基礎を学びやすい作りになっています。
よかったら参考にしてみてください。
(1)「ひとつずつ すこしずつ ホントにわかる」(英語)学年別シリーズ(新興出版社)
文法の解説がスッキリまとまっており、要点がパッとわかります。
また、単元によっては練習問題の前に、例題と解答が載っています。これはポイントが高いと思います。文法問題に慣れていない子も「こんなふうに解けばいいんだな」というのがわかりますからね。
さらに並べかえ問題には、パズル感覚で取り組めるような工夫が施されています。
今回ご紹介する3種類の中では、勉強が苦手な子にとって、最も取り組みやすい練習問題だと思います。
(2)「ひとつひとつわかりやすく。改訂版」(英語)学年別シリーズ(Gakken)
文法の解説がとにかくわかりやすいです。「文法の教え方がわからない」という保護者や家庭教師の方が、この解説を参考にしながら教える、というのもオススメです。
イラストが豊富なので、「文字だけで説明されるより、イラストもあったほうが理解しやすい」というお子さんに向いています。
(3)「英文法 パターンドリル」学年別シリーズ(文英堂)
知識を定着させるためのドリルです(文法の解説は最小限に抑えられています)。
各単元で、重要構文が何度も繰り返し出てきます。これぞ、まさに「ドリル」。徹底的に反復練習をしたい、というお子さんにオススメです。
「この単元のキモは何か?」を意識しやすい作りになっています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。